ヒラリー・クリントン VS バーニー・サンダース:充実の戦いの全貌

共和党の候補指名獲得レースと比べると、ヒラリー・クリントンとバーニー・サンダースの白熱したアイデアの競い合いは品格と知性の点で別世界のようにさえ感じられる(Photo by Joe Raedle/Getty Images)



リベラル派のシンクタンク「アメリカ進歩センター」のニーラ・タンデン所長は、クリントンと長年のつながりがある。タンデンは1990年代のクリントン政権のホワイトハウスで、大統領の内政担当顧問とファーストレディーの上級政策顧問を兼任。2000年のヒラリー・クリントンの上院選ではニューヨークで選対副本部長、08年の大統領選では政策ディレクターを務めた。


「サンダースの成功にはまったく驚いていない」と、現在はクリントンの外部選挙アドバイザーを務めるタンデンは言う。「このレースの奇妙なところは、多くの民主党員がオバマ大統領も強く支持していることだ。彼らはオバマ大統領のしたことを支持し、もっとやってほしいと思っている。どちらの側でも、大不況、政府に対する共和党の攻撃、ワシントンの事実上の停止状態によって、人々は従来型の答えを信用しなくなっている。政治的な打開や解決は、かつてほどの力をもたなくなった。人々はもっと破壊的な変化に関心を向けている」



オバマ政権のホワイトハウスで医療保険制度改革法の立案に関わったタンデンは、クリントンが進歩的左派の一部から疑いの目を向けられていることに「大きな皮肉」を見て取っている。「1990年代に彼女のために働いた者として、ビル・クリントンのホワイトハウス・スタッフの誰もが、それに外側でも誰もがヒラリーをリベラル派の旗手だと思っていたと言い切れる」と、タンデンは言った。「リベラル派の活動家たちがロビー活動で彼女の下に行っていた。それで、中道寄りの大統領スタッフが彼女を怖がるようになった」。タンデンは一息入れてから、こう続けた。「この問題には、ねじれた性差別が絡んでいる部分があると言わざるを得ない。彼女の立場が悪くなるような場合には、彼女の考え方はビル・クリントンと同じなのだからと私たちは思い込む。逆にそれだと具合が悪くなる場合には、彼女は別の考え方なのだからと私たちは思い込む」



クリントンの支持者の一部は、サンダースの選挙運動が党のためになっているという見方、つまりサンダースとの争いがクリントンを左寄りに動かせて、より強い大統領候補にするという捉え方にもいらだっている。元下院議員のフランクは次のように語った。「私が心配しているのは、両党の本当の違いに対する認識の不足に加え、私たちの過去の成果がおとしめられていることによって、かなりの数の人々がオバマ大統領の業績は取るに足らないと思い込まされてしまうことだ」



フランクは2007〜08年の金融危機後に成立したドッド・フランク法の共同提出者であり、銀行に対する規制の甘さを指弾するサンダースの論点に強い憤りをおぼえている。「『議会はウォール街を規制していない』という呪文は、エリザベス・ウォーレンの消費者金融保護局は無意味だと言うに等しい」と、フランクは言った。「あるいは、議会が成立させたボルカー・ルールについても同じだ。私はサンダースが不正確な認識を広めていることが気がかりだ。そのせいで若い人たちが、いわゆる『革命』が期待できる特別な場合にしか投票しなくなってしまうのではないか。私はスカリア(最高裁判事)の死去──私自身は悼んでいない──によって、それが変わることを期待している」



クリントンは本選挙への道を切り開き、党を結束させるための手段の一つとして、サンダースの提言の多くを取り込もうとしている。たとえば、当初は「すべての人のためのメディケア(高齢者向け公的医療保険)」だと切り捨てていたサンダースの医療保険制度案についても、その後になって、各州による医療保険加入窓口の開設は公的な選択肢を模索する実験的試みとして賛成だと転換した。




予備選での一連の勝利を経て、ヒラリー・クリントンはドナルド・トランプとの対決に準備を進めている(Photo by Melina Mara/The Washington Post via Getty Images)



Translation by Mamoru Nagai

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