ヒラリー・クリントン VS バーニー・サンダース:充実の戦いの全貌

共和党の候補指名獲得レースと比べると、ヒラリー・クリントンとバーニー・サンダースの白熱したアイデアの競い合いは品格と知性の点で別世界のようにさえ感じられる(Photo by Joe Raedle/Getty Images)


スーパーチューズデーの翌朝、多くの識者がサンダースは終わったと書くなかで、サンダース陣営はバーモント州アーリントンで記者会見を開いた。「我々には夢のような夜だった」と選対本部長のジェフ・ウィーバーは強調し、「5つ(の州)を狙って4.9を獲った」と述べた。サンダースはバーモント、コロラド、オクラホマ、ミネソタの4州で勝利し、マサチューセッツを史上最小の僅差で落としたのだ。「我々は11州を狙ってはいなかった」と陣営のシニアアドバイザー、テッド・ディバインが説明し、スーパーチューズデーは地理的要因と人口的要因の両面で選挙戦におけるクリントンにとっての「最高の1日」になったと表現した。





「獲得代議員数をめぐる話については、1980年代にこの問題の研究に時間を費やした者として、今の分析は率直に言って浅薄だと私は思っているし、現代の候補者指名プロセスの動き方に関する十分な理解をふまえたものではないと言わざるを得ない」と、ディバインは言った。「プロセスの動き方を知ったつもりで数字をはじき出し、指名獲得レースは終わったと結論している連中がいるのは知っている。私としては、現代の大統領選を理解するには算数以上の能力が必要だということを教えてやりたい」

ディバインは、そのうえでサンダースの勝利への道筋を示した。スーパーチューズデーで勝利を収めた4州の地理的な多様性から、南部での予備選が終わってサンダースに親和性の高い地域に選挙戦が移るとともに勝利の糸をたぐり寄せられることが示されているという。さらに、いずれかの時点でクリントンが大きくつまずけば、クリントン支持を約束していた代議員がサンダース支持に変わる可能性もあると示唆した。この点は、弱者の権利に的を合わせた選挙陣営にしては奇妙にも非民主的な口上ではある。

それでも、サンダースは当初から過小評価されていた。昨年4月の立候補表明の前日、ワシントン・ポスト紙のホワイトハウス担当記者クリス・シリッツァは端的に「彼に勝ち目はない」と書いた。コロンビア・ジャーナリズム・レビュー誌にいたっては、サンダースの立候補は「現職上院議員の大統領選出馬としてはほぼ最大限に」主流メディアから無視されていると書いた。

翌5月、サンダースが出馬表明後初めてアイオワ州を訪れた時に、すべてが変わり始めた。ダベンポートの小さなカトリック系大学で開いた選挙戦開始を告げる集会には700人の参加者が集まり、その時点で民主・共和両党の候補者を通じてアイオワ州での最大動員数を記録した。主催者側は、講堂の間仕切りを取り払って急遽スペースを広げ、若い人たちに年配者に席を譲るよう求めた。ジョン・ディアのTシャツを着た若者もいれば、麻薬戦争の根絶を訴えるメッセージが書かれたシャツを着た若者もいた。

その後の数日間、私は選挙運動を追いかけ、サンダースが政策アジェンダを訴えるのを聞いた(サンダースはアジェンダという語を「トランスジェンダー」の語尾のように発音した)。サンダースはメッセージの発信に徹し、アメリカを民主社会主義の方向へ押し進める政治的革命を訴えた。そして、どこへ行っても記録破りの数の聴衆を集め、ほとんど宗教的なまでの訴求力を発揮した。民主党のアイオワ州党員集会の2日前、アイオワ大学の体育館で開かれた集会には立ち見が出るほどの支持者が詰めかけ、集会の最後にはサンダースがヴァンパイア・ウィークエンド、ダーティー・プロジェクターズ、フォスター・ザ・ピープルの面々と一緒にウディ・ガスリーの「わが祖国」を歌った。


「わが祖国」を歌うバニー・サンダースと、サンダース夫人(Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg via Getty Images)
「選挙運動に本気で関わったのは初めてだ」とヴァンパイア・ウィークエンドのボーカリスト、エズラ・クーニグは舞台裏で私に言った。「信頼性」という言葉は使わなかったが、彼は何十年にも及ぶサンダースのメッセージの一貫性を繰り返し指摘した。「Youtubeで昔の彼の演説を見てほしい」と、クーニグは言った。「すごいよ。湾岸戦争中の1991年のやつは鳥肌が立つ。今から見ると啓示のようだ。それと(米議会の公聴会で)アラン・グリーンスパンに向かってアイン・ランドの元愛人と怒鳴ったやつも。2003年に経済は『良好』だって言ってたグリーンスパンが、ちょろいもんだと思いながら議会に自慢しに来た。それをバーニーがボコボコにした。金融危機が起こる5年前だ」

Translation by Mamoru Nagai

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE