アデル ロングインタヴュー(後編):子育て、ダイエット、そして『25』の制作秘話まで

Photograph by Theo Wenner


アルバム前半のハイライトは、『21』の『ルモア・ハズ・イット』『ターニング・テーブルズ』の2曲を共作したライアン・テダーと再びタッグを組んだ、ピアノのコードが印象的なバラード『レメディ』だろう。この曲は彼女がデビューアルバムでカヴァーした、ボブ・ディランの『メイク・ユー・フィール・マイ・ラヴ』に対する、彼女なりのオマージュと言えるかもしれない。彼女はこう歌う。「私があなたを癒してみせる」彼女はこの曲を書く過程で涙を流したというが、その深い優しさはリスナーにも伝わるはずだ。「あれは息子のことを歌った曲なの」アデルはそう話す。「でも同時に、私が愛するすべての人に向けた曲でもある。あの曲を書いたことで、私は自信を取り戻すことができたの」

『21』の制作時、彼女は歌詞のアイディアがぎっしり詰まったモレスキンのノートを常に持ち歩いていたという。しかし今作では、文字どおり白紙の状態から曲作りを始めることがほとんどだったという。コラボレーターたちがコードを奏で、アデルがメロディーと歌詞を即興で作り上げていくというプロセスは、その2つを同時に生み出すこともあった。「腰を据えて曲作りに取り組む彼女の存在感は圧倒的だった」ジェッソはそう話す。「即興で深い歌詞を書き、歌い上げる彼女のようなシンガーに出会ったのは初めてだったよ」ジェッソのマネージャー曰く、アデルの歌声は建物の外にまで響いており、まるで建物全体を揺らしているかのようだったという。

ブルーノ・マーズとの共作曲は、当初はアップテンポな曲になる予定だったが、生れたのはクライマックスでのキー・チェンジと、彼女自身が「見せつけるよう」だと形容するボーカルが印象的なバラード『オール・アイ・アスク』だった。「あんな風に歌ったことは過去になかったと思う」アデルはそう話す。「あんなに高いキーの曲はこれまでなかったから。でもスタジオでブルーノと一緒に歌えたことは楽しかったわ」(彼女のことを「まさにスーパースター」と形容するブルーノは、歌詞の一部で彼女と意見がぶつかったこともあったという。「でもレコーディング後に聴き直した時から、むしろその部分が一番のお気に入りになったんだ。コンサートの時には僕を客席に招いて、そのフレーズを自信満々に歌ってやるって意気込んでたよ」)

中には実を結ばなかったコラボレーションもあった。ブラーのフロントマン、デーモン・アルバーンとの共同作業がそうだ。デーモンはメディアの前で、彼女のことを「頼りない」と評し、アルバム用の曲群を「中途半端」だと形容した。「自分のアイドルとは対面しないほうがいいって言うけど、まさにそのとおりだったわ」アデルはそう話す。「私はブラーの大ファンだったから余計に悲しかった。彼と仕事したことを後悔してる」結局、そのセッションで曲が完成することはなかった。「どの曲も私のアルバムには合わなかった。彼は私には自信が足りないって言ったらしいけど、私は私以上に自信に満ちた人を知らないわ。彼も子供がいるから、出産後のカムバックに対して感じていた不安についてアドバイスを聞かせてもらいたかったの。でもそれを自信不足と捉えるなんて、見当違いもいいところ」

Translation by Masaaki Yoshida

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