日本のシティ・ポップは、なぜ世界中のリスナーを虜にしているのか?

シティ・ポップはジャンルよりもムードを示す言葉

『Pacific Breeze』はLight in the AtticによるJapan Archival Seriesの最新作となる。Cabicはネットラジオ局Dublabの創設者Mark “Frosty” McNeill、DJで音楽スーパーバイザーのZach Cowie、そしてJapan Archival Seriesのプロデューサー北澤洋祐と共に、本作の監修を担当した。

北沢氏は『Pacific Breeze』に収録された高中正義の1979年作「BAMBOO VENDOR」、そして吉田美奈子の1980年作「Midnight Driver」の2曲が、シティ・ポップの何たるかを体現していると話す。煌びやかでトロピカルな前者、タイトルにふさわしいタフなビートが光る後者のどちらも、シティ・ポップがジャンルというよりもムードを示す言葉だったことを物語っている。



「本作の収録曲を選ぶ上で、具体的なスタイルやジャンルの縛りは設けませんでした」北沢氏は本誌にそう語っている。「これは都市に生きる人々による、都市に生きる人々のための音楽なんです」

シティ・ポップのルーツはニューミュージック(ザ・バンド、ボブ・ディラン、そしてローレル・キャニオンのシーンに触発されて生まれたフォークとロックのハイブリッド)だが、最大の特徴は主要なアーティストがみんな日本語で歌っていたことだ。70年代初頭以前は、日本のロックバンドの大半が英語詞にこだわっていた(Light in the Atticが2017年に発表したコンピレーション『Even a Tree Can Shed Tears』はニュー・ミュージックも取り上げている)。はっぴいえんど(初めて日本語でロックを歌ったバンドとされる)の細野晴臣や鈴木茂といったニュー・ミュージック界のキーパーソンたちも、やがてシティ・ポップへと移行していく。

『Pacific Breeze』収録曲の中では最も古い、鈴木茂の1976年作「Lady Pink Panther」は両シーンを繋ぐ曲だとされている。風通しの良いフォークロックという核の部分を残しつつも、ボサノバのグルーヴとストリングス、そしてセンスのいい控えめなメロディカの音色が同曲をユニークなものにしている。


Translated by Masaaki Yoshida

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