日本のシティ・ポップは、なぜ世界中のリスナーを虜にしているのか?

80年代の東京(Photo by Ken Straiton/REX/Shutterstock)



ヴェイパーウェイヴ、ストリーミングによる再発見

戦後に登場したシティ・ポップは、経済大国としての日本のサウンドトラックとなった。自分たちが海外の音楽に刺激されたように、アーティストの多くはその音楽を世界中に広めたいと願いながらも、それが叶わないであろうことを自覚していた。しかし近年、彼らの音楽はインターネットを通じて世界中のリスナーに知られることになった。Yung BaeSaint PepsiLuxury Elite等のヴェイパーウェイヴのアーティストたちは、過去と未来の境目を無効化し、ノスタルジックなドリームスケープと資本主義の悪夢が溶け合うようなその音楽に、シティ・ポップとそのルーツであるアメリカの音楽のエッセンスを大胆に取り込んだ(同じく活況を呈している日本のヴェイパーウェイヴのシーンにも同様のバックグラウンドがある)。

またヴェイパーウェイヴのアーティストたちは、アニメと日本語を用いた万華鏡のようなヴィジュアルを多数生み出している。それはまるで、(マーティン・デニーに代表される)日本の音楽を安易に模倣したアメリカの音楽を意識した日本の音楽のアメリカ人による解釈という、複雑なパラドックスを体現しているかのようだ。昨年、極めて優秀なYouTubeのリコメンデーション・アルゴリズムによって、竹内まりやの1984年作「プラスティック・ラブ」は何百万という再生回数を記録した。こういった現象について、Redditのユーザーquippedはこうコメントした。「シティ・ポップ、またの名をyoutuberecommendationcore」



シティ・ポップは、ストリーミング主導の現代のシーンと共鳴している。ニューヨーク・タイムズ紙の音楽チームは、ストリーミングを強く意識したラナ・デル・レイ以降のエレクトロポップ(それを目的として作られたものも多い)を「Spotify-core」と名付けたが、そういった音楽とシティ・ポップのムーディな体感型サウンドとの共通点は少なくない(佐藤奈々子の代名詞である息遣いが聞こえるようなヴォーカルは、Spotify-coreの曲と見事にマッチするだろう)。




またストリーミングによって一気に需要が高まった「チルアウト」のための音楽にも、BGMとしてのシティ・ポップの影響が色濃く残っている。『Pacific Breeze』には、CBSのSound Image Series(ニューヨークやエーゲ海といった、特定の場所のムードを表現したアルバム集)に収録されていた「ミコノスの花嫁」と「Sun Bathing」も収められている。Sound Image Seriesの意図はリスナーを実際にどこかに向かわせることだったが、Spotifyのチルアウトトラックを集めたプレイリストや、YouTubeの「勉強/リラックス用のチルでローファイなヒップホップビート」専門チャンネルは、インドア派の人々のためのものだ。どこで何をしていようと、それは退屈さを紛らわすためのものに過ぎない。

Translated by Masaaki Yoshida

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