アデル インタヴュー(前編):「子供を産まなかったら、私は音楽の世界に戻ってこなかった」

By BRIAN HIATT
「音楽は私の趣味でしかないの」アデルが語る私生活、桁外れの成功、そして待望のニューアルバム『25』Photograph by Theo Wenner
「すべてはどっきり企画で、ある日突然トッテナムでの平凡な生活に戻るんじゃないかっていつも思ってる」

アデルの愛車4ドアミニクーパーの後部座席では、ケール、キュウリ、アーモンドミルクを混ぜたミックスドリンクのカップ、そして空のチャイルドシートが揺れている。

南ロンドンのハイストリートを走り抜けながら、彼女はふいにこう口にした。「最近はどういう曲が流行ってるの?シーンの動向に全然ついていけてないのよね」
答えはひとつしかない。「今すべての音楽ファンが待ち望んでいるアルバムがあるでしょう」
「やめてよー!」無邪気に笑いながら、アデルは筆者の肩を軽く押しやった。アニメのキャラクターのような、彼女の豪快な笑い方を取り上げたYoutubeのビデオ「The Adele Cackle」は、ファンの間でも有名だ。

グリーンの瞳を見開いて、彼女はこう続ける。「ほんとにそうだといいんだけど。自分ではもう1年早く出すべきだったって感じてるの。」2011年発表の彼女の前作『21』は、音楽業界が不振にあえぐ現代において、3,100万枚という奇跡的なセールスを記録した。ビヨンセやアレサ・フランクリンといった大物からも惜しみない賛辞を受ける彼女が、過去数年で獲り損ねたアワードといえばノーベル平和賞くらいのものだろう。

彼女はこう続ける。「でも本当に、今のシーンがどんな感じなのか把握できてないの」FKAツイッグス、アラバマ・シェイクスのファンであることを公言する彼女は、昨年のグラストンベリー・フェスティバルでは客席からカニエ・ウエストのライブを観ていたという。「今どんな曲がチャートを賑わしているのかも全然知らないのよ」彼女は笑ってこう続ける。「音楽業界の流れからひとり取り残されたみたいに感じてるのよね」彼女のコックニー英語は少しなりをひそめたものの、「with」の最後を「v」と発音する癖はいまだに抜けないようだ。

ロンドンの天気の悪さは有名だが、10月初頭の当日は普段にも増してどんよりとした雲が空を覆っていた。3歳になる彼女の息子アンジェロを動物園に連れて行くという彼女のプランは、雨によって台無しになるかもしれない。すぐ隣を無数の車が走り抜けていくが、彼女の存在に気づくドライバーはいない。「メイクしてドレスアップした状態で外に出たらさすがに気づかれるかもしれないけど。普段はメイクも控えめにしてるの。あんまり派手なのは気がひけるから」彼女の服装はカニエ・ウエストのダークなファッションを思わせる、ヘンプのような素材でできたゆったりとした青と黒のセーターに、黒のレギンスと白のローカットのコンバースという、まるで寝起きに急いで準備した学生のような印象だ。鮮やかな金髪は後頭部でゆるく束ねられており、両耳にはツインのフープイヤリングが光る。最低限のメイクは小じわを隠すためだと話すものの、その健康的な顔色のせいか、彼女は年齢よりもずっと若く見える。
Translation by Masaaki Yoshida

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