アデル インタヴュー(前編):「子供を産まなかったら、私は音楽の世界に戻ってこなかった」

「音楽は私の趣味でしかないの」アデルが語る私生活、桁外れの成功、そして待望のニューアルバム『25』Photograph by Theo Wenner


アコースティックサウンドが中心で、ジャズの影響をうかがわせる2008年のデビューアルバム『19』の収録曲は、そのアパートに住んでいた頃に書いたという。MySpaceで公開したデモが反響を呼んだことをきっかけに、彼女はアートスクールを卒業すると同時に、インディー好きの間で知らない者はいないXLレコーディングスとの契約を果たした。(彼女は当時からレーベルのクールなイメージを気にもかけていないようだった。ディケンズはこう話す。「彼女はインタビューの度に好きなアーティストはスパイス・ガールズだと公言していた。アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンやニッツァー・エブとかじゃなくてね」)現在アフリカン・チョイス・マーケットとなっている場所には、かつて彼女が年齢をごまかしてはビールを飲んでいたパブや、マニキュアを塗ってもらっていたハリウッド・ネイルズがあった。2012年のブリット・アワード出席前にも、そこでマニキュアを塗ってもらったという。

かつての住まいを見つめる彼女の表情からは、複雑な思いが見て取れる。過去の生活を恋しく思う気持ちは、新作の曲中でも歌われている。中でも彼女のお気に入りは、トバイアス・ジェッソ・Jrと共作したエルトン・ジョンを思わせるバラード『ホエン・ウィー・ワー・ヤング』だという。この曲はオスカーでバーバラ・ストレイサンドが歌った『ザ・ウェイ・ウィー・ワー』にインスパイアされたとされている。同じくアルバムのハイライトである『センド・マイ・ラヴ(・トゥ・ユア・ラヴァー)」は、もともと『ウィー・エイント・キッズ・ノー・モア』というタイトルだったが、「古典的すぎる」という理由で完成間際に変更されている。 

未熟な部分を残しつつも、アルバムで描かれている時の経過に対するメランコリックな想いはとてもリアルだ。彼女はこう語る。「25歳になって以来、後悔していることことがたくさんあるの。悲しみの感じ方も変わったわ」90年代のマドンナのバラードと『イパネマの娘』をミックスしたような印象の『ミリオン・イヤーズ・アゴー』で、彼女はこう歌う。「時々思うの、かつて自分が思い描いた自分になれなかったのは、この世で私だけなのかもって」彼女はこの先の人生の大筋を見極め、いくつかのドアは既に閉ざされてしまったことを悟ったのだろう。「もう今後もできないだろうって思うことがたくさんあるの」彼女はこう続ける。「自分が有名人だからじゃなくて、そういう時間が持てないだろうって。ジャーナリストや教師になるとかね」

彼女は深く息をついた。「自分一人で生きていくことも、もうできないわ」彼女はこう続ける。「子どももいるし、信頼するパートナーもいる。人生の他のことはともかく、その選択肢を選んだことに後悔は少しもないわ。私が自分一人で生きていくことができた時間は短かった。母の子として育ち、気づいたら自分が母親になってた」そう言って彼女は笑う。「自分の足で人生を歩むことができたのは5年くらいね」

Translation by Masaaki Yoshida

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