VivaOla、藤田織也、つやちゃんが語る「オルタナティブR&B」の変遷

左から、VivaOla、藤田織也(Photo by Mitsuru Nishimura)

かつて、〈オルタナティブR&B〉という時代があった。「あった」とあえて過去形で記してみるのは、挑発的すぎるだろうか。2000年代までの従来のR&Bに対して、抽象/内省/折衷……等で説明されることの多い2010年代の「R&Bのような何か」は、フランク・オーシャンやザ・ウィークエンド、ミゲル、パーティネクストドア、ブライソン・ティラーといった面々の作品を象徴としながら、時代の空気を劇的に変えていった。R&Bはもちろんのこと、ポップミュージックにも大きな変化を与えたそれら作品群は、しかし〈オルタナティブR&B〉という便利なラベリング——何か言っているようで何も言っていない——によって曖昧に片づけられ、その一つひとつはあまり検証されないまま来てしまったように思う。あるいは、(特に日本の主流の音楽ジャーナリズムにおいては)フランク・オーシャンやザ・ウィークエンドといったロックの文脈を持つ大物ばかりに議論が集中し、その他R&Bアーティストは語られることが少なかったのではないだろうか(だからこそ、数少ないR&Bライターによる記述は貴重な資料だった)。

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冒頭で「あった」と記したのは、今ようやく〈オルタナティブR&B〉について冷静に振り返られるようなタイミングが来たと感じているからだ。数々のオルタナティブな試みによって確立されたアプローチを前提としながら、90’s~00’sへの回帰、アフロビーツとR&Bのクロスオーバーといった新たな潮流も経ることで、長らく続いた本流-オルタナティブという二項は崩れ、R&Bをもっとフラットに俯瞰できる時代がやってきた。そもそも2020年代に突入してから、R&B(に影響を受けたポップミュージック)が世界中を席巻しているという背景もある。SZAが驚くべきヒットを記録し、ビヨンセは歴史に残るツアーを行なった。ヴィクトリア・モネやスティーブ・レイシーの曲がTikTokを賑わせている。K-POPは最新のR&Bのモードを搭載した楽曲を次々とチャートに送り込んでいる。いまR&Bは、トレンドの潮目を左右するような重要な位置にいる。

VivaOlaと藤田織也は、そういった現代のR&Bを優れた見識と深い洞察によって自作へ落とし込んでいるアーティストだ。VivaOlaは、3月20日に最新アルバム『APORIE VIVANT』をリリースした。客演には藤田織也が入り、プロデュースには注目を集めるコレクティブ〈w.a.u〉のKota Matsukawaが参加した。オルタナティブR&Bの象徴であるブライソン・ティラーの諸作品を再解釈したという本アルバムは、R&Bの未来を指し示すとともに、今年のアジアのR&Bを代表する一枚にもなるだろう。今回、VivaOlaと藤田織也の両氏に、最新アルバムをきっかけとしながら〈オルタナティブR&B〉について振り返ってもらう対談を企画。果たして、あの時代とは何だったのだろう? 筆者が川口真紀氏との共同監修を務めた『オルタナティブR&Bディスクガイド』(DU BOOKS/3月29日発売)とともに、ぜひこの大きなムーブメントを振り返ってみてほしい。



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