明日の叙景インタビュー J-POPとブラックメタルのその先へ

左から関拓也(Ba)、布大樹(Vo)、齊藤誠也(Dr)、等力桂(Gt)Photo by Jun Tsuneda

Rolling Stone Japanが「Future 25」日本代表の一組に選んだ明日の叙景。『現代メタルガイドブック』著者の和田信一郎(s.h.i.)が聞き手を務めたロングインタビューをお届けする。

2022年発表の『アイランド』が絶賛された明日の叙景。「J-POP? それともブラックメタル?」というCD帯コメント通りの複雑なニュアンスを示しつつ、音からアートワークまで絶妙に親しみやすい同作は、アジアやヨーロッパでも歓迎され、近年は国内外でソールドアウト公演を連発している。今年3月にライブアルバム『Live Album: Island in Full』をリリースし、4月6日に大阪・Yogibo HOLY MOUNTAIN、4月29日に東京・渋谷WWWXで同作のリリース公演を開催する4人に、音楽的バックグラウンド、ライブに臨む姿勢の変化などを語ってもらった。


Photo by Jun Tsuneda

バンド結成の経緯、プレイヤーとしてのルーツ

─そもそも明日の叙景は、どういう経緯で結成されたのでしょうか。

等力:まず、リズム隊の二人が小学校からの幼馴染でバンドをやっていたんですね。それで、自分が中学のときの友達の友達みたいな感じで「楽器うまいやつがいるらしいよ」と引き合わせられ、高校のときにこの三人でインストバンドを始めたのが明日の叙景の一番最初のきっかけで。もう12〜13年になりますね。その頃からやってることは基本的に変わらないよね。当時のスタジオ映像を見ると、やり方は分かってないけどまあまあ『アイランド』だし(笑)。

それで、大学生になってライブを始めてみて2〜3回やったところで、ライブハウスのブッキング担当の人に「華が必要じゃないか」みたいなことを言われたんですね。その一方で、当時はisolateやENDONのように、アンダーグラウンドなバンドがブラックメタルの方法論を使って尖ったことをやろう、みたいなムーブメントがあったんです。

布:heaven in her armsやCOHOLもそうだし、Deafheavenが初来日した頃でもありました(2012年11月)。

等力:それで、Twitterを見ていたら、大学のメタル系コピーバンドサークルで布さんが歌っている動画があったんですね。ステージングも良くて。それで、この人を誘ってみようよと話し合ってDMを出して、そこから今に至る感じですね。

布:漫画喫茶で漫画読んでたらTwitterにDMが来て。「よかったらバンドのボーカルやってくれませんか」「いいですよ」というふうに決まりました(笑)。

等力:都内のマンモス校みたいなところにはメタル専門のサークルがよくあるけど、そういうところの役割って相当でかいですよね。それでシーンが成り立っているような側面がある。

布:蓋を開けてみたら、OBがみんなどこかのバンドでやっているという。

─プレイヤーとしてのヒーローみたいな人って、皆さんそれぞれおられますか。

等力:自分は、誰か一人に憧れるのを避けるために、いろんなものに興味を持つようにしているようなところがあります。でも、9mm Parabellum Bulletの滝善充さんはやはり大きいですね。世代的にはまったく避けて通れないというか。同じギター、同じ機材も使ってますし。ギターヒーローですね。


等力桂(Gt) Photo by Emily Inoue

齊藤:一番最初はKISSでした。4歳とか5歳の頃から好きで。オリジナルメンバーのピーター・クリスも、最終メンバーのエリック・シンガーも、一番最初に観て影響を受けたドラマーです。リズムがヨレることに対してネガティブな印象を抱かないのは、KISSによるところが大きいかもしれないですね。その後にLUNA SEAの真矢さんを聴いて、リズムのノリの良さに影響を受けて。DIR EN GREYのトリッキーさや、FACTの手数の多さ、Toolの奇怪さ、PeripheryやAnimals As Leadersみたいなジェントの流れにも影響を受けています。それから、MEINLとかZildjianといったドラムメーカーのYouTubeチャンネルを観て面白いなと思ったりもしています。


齊藤誠也(Dr)Photo by Emily Inoue

関:自分は、THE BACK HORNの岡峰光舟さんですね。よく動くベースラインの作り方が凄く勉強になったし、高校の頃にたくさんコピーしたので、それが馴染んでいるのもあるのかもしれません。それから、メタルをたくさん聴くようになったのは最近なんですけど、テクニカルデスメタルのうねうね動くフレットレス・ベースに出会って、こういうのもあるんだなと思ったり。


関拓也(Ba) Photo by Jun Tsuneda

布:自分は、振る舞い的なところで言うと、B’zの稲葉浩志さんとBUCK-TICKの櫻井敦司さんですね。ポルノグラフィティもそうですけど、言葉の乗せ方などを参照しているところもあります。ボーカルラインを入れるときは、メタルでないポップスやロックばかり聴くようにしているときもありますね。B’zやBUCK-TICKをシャウトで歌ってみて、そのラインを曲に乗せてみるとか。

憧れという面で言うと、Lorna Shoreのウィル・ラモス。最強でしょう。エクストリームメタルでは、あの人が完成形だと思います。まくし立てるところでもリズムがブレないですし、耳障りにならない芯のこもった高音を安定して出せるのも凄い。低音は言わずもがな。ずっと練習していて真似できないんですけど、凄く参考になります。


布大樹(Vo) Photo by Park Sin Joon

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