歴代最高のメタルアルバム100選

ローリングストーン誌が選ぶ歴代最高のメタルアルバム100選(Photo by Rolling Stone)

米ローリングストーン誌が2017年に作成した「歴代最高のメタルアルバム100選」。100枚を選出するにあたって、基本となったルールは以下である。

・60年代後半から70年代前半における先駆者たちなくしてメタルが生まれなかったことは確かだが、彼らの作品の多くはフォークやブルースのカラーが濃く、メタルのフォーマットと一線を画しているため、本ランキングでは選出対象外とした。

・またAC/DCやガンズ・アンド・ローゼズをはじめとした、テンションという点では共通するものの、サウンド面では必ずしも接点のないバンドも除外。

・さらに、正真正銘のメタルアルバムという定義と矛盾しないよう、やや邪道なバンドや、音楽性にムラのある作品も登場しない。

これらのルールによりランキングが作成された。なかには本誌が過去にこき下ろしたり無視した作品も含まれているが、これには我々自身への戒めの意味も込められている。この機会にメタルのヒストリーを存分に楽しんでいただきたい。

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Text by Christopher R. Weingarten, Tom Beaujour, Hank Shteamer, Kim Kelly, Steve Smith,  Brittany Spanos, Suzy Exposito, Richard Bienstock, Kory Grow, Dan Epstein, J.D. Considine, Andy Greene, Rob Sheffield, Adrien Begrand, Ian Christe
Editor by Daishi Ato

100
アヴェンジド・セヴンフォールド
『City Of Evil』 2005年

バンド史上最も解放感に満ちた3rd

メタルコアのルーツから意図的に距離を置いた3作目。あえてクラシックなメタルの魅力を凝縮。笑えるほど仰々しくキャッチーなコーラスとポップ・クラシカルなギターのアルペジオが印象的なリード曲「Beast And the Harlot」がハイライトなのは間違いない。ジェットコースターのようなリフと地響きを思わせるドラミング、そして速弾きが全編で炸裂。フロントマンのM.シャドウズはシャウトを用いず「歌」に徹している。リリース当時、こういった古き良きメタルの様式美を見直そうとする動きはほとんど見られなかった。転換作『City Of Evil』以降、彼らはプラチナディスクを連発する。「セルアウトしたって見なされることも多かったけど、それを補って余るだけの反響があった」シャドウズはそう語っている。R.B.



99
エヴァネッセンス
『Fallen』 2003年

ゴシックメタルムーブメントの急先鋒

映画『デアデビル』のサントラに収録された、不穏な空気が漂うシネマティックな「Bring Me To Life 」が注目を集めたことで、エヴァネッセンスはゴシック・メタル・ムーブメントの急先鋒となり、世界で最も勢いのあるバンドの一つとなった。エイミー・リーのオペラを思わせるヴォーカルを武器としたバンドは、男一色だった2000年代前半のロックシーンにドラマ性とフェミニティを持ち込んだ。鬱、自殺願望、死といった重いテーマを掲げながら、『Fallen』は2003年で最も売れたアルバムの一つとなり、全世界で1700万枚ものセールスを記録。発表から15年以上が経った今でも、本作は叙情性を備えたヘヴィメタルの理想形の一つとして認知されている。B.S.



98
サン O)))
『Monoliths & Dimensions』 2009年

ドローンに宿る実験精神

「サン O)))の楽曲にはジャズの要素が少なからずあると思う。理論の面だったり、型にはまらないという点においてね」グレッグ・アンダーソンはThe Wire誌にそう語っている。エレキギターによる地鳴りのようなドローンを代名詞とするサン O)))とデイヴ・ブルーベックを混同する人は皆無に違いないが、アヴァンメタル界の大物デュオの音楽にはジャズ譲りの奔放な実験精神が確かに宿っている。エレクトリック期マイルス・デイヴィスの長尺でフリーフォームな作風にインスパイアされた6作目は、バンド史上最も壮大なレコード。16分間の光に満ちた瞑想曲「Alice」では、トロンボーン奏者のジュリアン・プリースターがコーダを演出している。C.R.W.



97
ゴジラ
『From Mars To Sirius』 2005年

ガッツと知性に満ちた音楽性で登場

ブラックメタル至上主義者や、エモとメタルのクロスオーバーを狙うトレンドセッターが台頭していた2000年代初頭に、ゴジラはスラッシュメタルとデスメタルが混じり合うガッツと知性に満ちた音楽性でシーンに殴り込んだ。初期のセパルトゥラから影響を受けた彼らは、後期モービッド・エンジェルを思わせるスラッジメタル系サウンドを確立。歌詞のテーマも音楽に匹敵するほどヘヴィで、ビッグなサウンドと自然音に合わせて、比喩を用いながらエコロジーや海洋哺乳動物の保護について歌っている。彼らは環境保護に取り組むバンドとして認知され、ジョー・デュプランティエはフランスが生んだ久々のギターヒーローとして崇められるようになった。I.C.



96
クヴァラータク
『Meir』 2013年

主流と地下の境界線を無効化する2nd

2010年代のメタルを語るうえで、バルカン半島各地のサブシーンについて触れないわけにはいかない。そのなかでも、不遜な態度と憎めないキャラクターで、クラシックなメタルの魅力を復活させたクヴァラータクは別格だ。メインストリームとアンダーグラウンドの境界線を無効化するかのような遊び心に満ちた2作目は、コンテンポラリー・メタルのお手本のようなアルバム。アーランド・イェルヴィックによるシャウトやうなり声はすべてノルウェー語だが、リフにはユニバーサルな魅力がある。ノルウェーのナショナルチャートの頂点に立っただけでなく、Spellemann Award(ノルウェーのグラミー賞)で最優秀メタルアルバム賞を受賞した。H.S.



Translated by Masaaki Yoshida

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