グランドサンが語る自分をさらけ出し音楽を作る理由、マイク・シノダから受け継がれた精神

グランドサン(Photo by Yukitaka Amemiya)

カナダのトロント出身のオルタナティブ・アーティスト、grandson(グランドサン)。リンキンパークのマイク・シノダの楽曲「Running From My Shadow feat. grandson」(2018年)でも知られ、パンク、グランジ、ヒップホップ、インディーロック、エレクトロ……様々なサウンドを肉体化した陰影の深いパワフルなサウンドを奏でる。音楽活動と並行して、大きなプラットフォームを持たない活動家を支援する基金「XX Resistance Fund」を創設する等、社会活動にも積極的だ。自身の内面を深く見つめたセカンドアルバム『I Love You, I’m Trying』を引っ提げて開催された初来日公演の直前にインタビューした。

【写真】グランドサン撮り下ろし(全5点)

ーライブではモッシュピットを誘発したり、力強くオーディエンスに呼びかけるMCが印象的です。あなたにとってライブとはどんな場所でしょうか?

グランドサン:僕は音楽を使って様々なことを伝えようとしています。それは政治的なことかもしれないし、自分のメンタルヘルスに関することかもしれない。その音楽をライブで演奏することで、誰しもがパワーを宿しているし、自分が望むままの変化を人生にもたらすことができるということを伝えていきたい。モッシュピットに入ったり、飛び跳ねたりすることをきっかけに人生は自分で切り開いていけるんだという気持ちを感じてほしいと思っています。

ー大きなプラットフォームを持たない活動家を支援する基金「XX Resistance Fund」を創設していますが、音楽活動と社会活動の相互関係をどう捉えていますか?

グランドサン:コミュニティの変化に向けて励ましたり、コミュニティの中で取り残された人たちに解毒剤的な音楽を提供するということを目指しています。直面している問題のスケールに圧倒されて何もできない人もいると思いますが、僕の音楽によって少しでもポジティブな方向に向いてもらえることができたら嬉しいです。例えば、僕の歌詞を何かに活かしてくれたり、僕のメッセージを自分のものにしてくれるようなことが積み重なって他の世界に繋がっていく。そういったことをイメージしながら、両方の活動を行っています。


Photo by Yukitaka Amemiya

ー昨年リリースされたセカンドアルバム『I Love You, I’m Trying』はインディーロック、ヒップホップやエレクトロといった様々なサウンドが感じられますが、どんなアルバムにしたいと思いましたか?

グランドサン:僕はインターネット世代なので、手軽に様々な音楽を聞くことができる言わば音楽のビュッフェみたいな環境で育ってきました(笑)。自分で曲を作り始めてからも、いろいろな音楽を頂戴して、自分の指紋のついた音楽を作っていきました。音楽、特にロックはありきたりなものをやる必要はないと思っています。僕はソロで活動していますが、プロデューサーと組むことがプレッシャーになったり、具体的に「サビはこうやって作るんだよ」という指示にそのまま従って作るとありきたりのチーズバーガーみたいな音楽が出来上がってしまうことがあります。そうなりたくなかったこともあって、自由にいろいろな音楽を取り入れました。結果、ユニークな創造性がある作品になったと思うし、ロックの伝統的な信念を取り戻せた気がしています。そして、僕自身が自分の音楽の一番のファンだと思える作品にもなりました。

ー前作の『DEATH OF AN OPTIMIST』に比べて、歌詞の内容がパーソナルなものになっていますが、そうなったのはなぜでしょう?

グランドサン:優れたアーティストというのは、個人的なストーリーや政治的なストーリー、周りにあるものすべてを自分の音楽に取り入れるものだと思っています。結局すべてはポリティカルなことに繋がっていると思うんですよね。例えば生活していて、「救われない」と思うようなことは政治家が原因になっていることが多い。一方で、僕にとっては曲を書くことが一番のストレス発散です。世界中でライブをやっていく中で、色々と抱えていたものを楽曲にしたアルバムが作れたことで前に進める気持ちが生まれました。自分の感情や信念を曲にするのはすごくパワフルな体験です。自分のことをわかってもらうためのツールとして音楽を使ってきたんですが、自分をさらけ出した音楽でないとリスナーは入ってくることができません。それが「I Love You, I’m Trying」でできたことは誇りです。

Rolling Stone Japan 編集部

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