マイク・シノダが語る、ソロワークスとリンキン・パーク『Meteora』20周年

『Meteora』リリース当時のリンキン・パーク。写真左端がマイク・シノダ

マイク・シノダの新曲がリリースされた。ソロ名義となる新曲「In My Head」で、カイリー・モーグをフィーチャー。同日に全米公開となった人気映画シリーズの『スクリーム6』に使われている。『スクリーム6』にはもう1曲マイク・シノダの楽曲があって、こちらはマイクが制作・プロデュースを手がけたデミ・ロヴァートの曲「Still Alive」となっている。

【動画を見る】リンキン・パーク「Lost」ミュージックビデオ

一方、リンキン・パークの方も、2003年に発表した2ndアルバム『Meteora』の発売20周年を記念した『Meteora: 20th Anniversary Edition/メテオラ: 20周年記念盤』が4月7日にリリースされた。『Meteora』は全世界でトータル2700万枚をセールスし、グラミー賞にもノミネートされ、世界各国で数多くのプラチナムディスクを獲得したモンスター・アルバムだ。このエディションで最も注目なのは、未発表音源が収録されているところ。特に、当時ミックスまで完了していたものの、その後忘れ去られてしまったという楽曲「Lost」のクオリティの高さには驚かされる。ボーカルはもちろん故チェスター・ベニントンだ。今同じタイミングで、未来に向けたソロの新曲と、過去のレガシーである『Meteora』の20周年記念盤を発表することになったマイク・シノダに話を聞いた。

―ちょうど1年前にNFT特集でマイクにインタビューしましたが、その後、音楽とテクノロジーの融合に関してはどのように追求していますか?

マイク・シノダ 今はどちらかと言うと、精神的にもそうなんだけど、もっと純粋に音楽をやりたい感じなんだよね。もちろん今もテクノロジーには興味があるし、Web3.0の先端もAIのこともちゃんと追っかけてはいる。でも今毎日をどう過ごしてるかって言ったら、新しい曲の制作になるんだよね。自分の音楽が2023年にはどういう風に鳴っていてほしいのか。そういうことを考えてるんだ。2020年から2022年にかけては、インストゥルメンタルの音楽をたくさん制作してたし、他の人の曲作りやプロデュースをたくさん手がけていた。今は僕自身の中から生まれてくる音楽が再び楽しくなってきてるんだ。でもこれって、ちょうどこの2~3ヶ月のことなんだよ。

―ソロ名義としてリリースした新曲「In My Head」は、おそらくそういう最近の制作から生まれたものだと思いますが、映画『スクリーム6』の曲でもありますよね。『スクリーム6』を意識した部分もありますか?

マイク・シノダ この曲のトラックはすでにデモとして作っていたんだ。それがちょうど『スクリーム6』のプロデューサーから連絡があったタイミングでね。「新しい映画の曲を作らないか?」って言われた時に、僕は「もちろん」って答えたよ。『スクリーム』は大好きだからね。しかも「デミ・ロヴァートは好きか?」って聞くから、「面白いことを言うね。ちょうど来週、彼女と会うんだよ」って僕は答えて。彼女にこの話をしたら、スゴく乗ってきたんだ。『スクリーム6』の制作チームには、何曲かデモを聴かせたんだけど、「In My Head」のデモを聴いて、「この曲はヤバいね。でもこの曲ともう1曲の2曲とも映画で使うことはできないか?」って言うんだ。「もちろんだよ。夢みたいな話じゃないか」って僕は答えたよ。それで「In My Head」と、僕がプロデュースしたデミの曲「Still Alive」の2曲が使われることになったんだ。「In My Head」がどういう風に曲として形になるのかは、僕の中ではすぐにわかったし、ごく自然に進めることができた。この曲で何について歌いたいのかはすでに決めていて、それを映画と結びつけた。これはパラノイアの歌であり、決して止まらないということを歌っている。僕の個人的な経験がベースになってるんだけど、映画の主人公もストーリーの中ではパラノイアと戦っているんだ。



―「In my head, there's a million little voices saying you'll never make it」(「僕の頭の中で百万もの小さな声がささやくんだ。おまえには無理だって」)というリリックが出てきますね。

マイク・シノダ 自分がバカなことを言って、最終的に、「ああ言えば良かった」とか「あんなことはすべきじゃなかった」とか考え始めるときついよね。2020年って、そういうことに対してスゴくセンシティブな時期だったと思うんだ。僕自身もこの時期は以前にも増して自分の内面と戦っていた。それでこのリリックが生まれたんだと思う。

―映画の『スクリーム』は好きでした?

マイク・シノダ 最初の『スクリーム』のポスターって覚えてる? ドリュー・バリモアがポスターの前列に何人かと一緒に写ってるんだ。てっきり彼女が映画の主人公だと思ってたら、映画を観たら最初に殺されてしまうんだ。マジで信じられなかったよ!(笑) 主人公を殺すなんて。そういう意味でも、この映画はマジでヤバいと思ったね。

―「In My Head」のMVではAIアートを使っていますが、AIの会社、Kaiber.aiが制作に関わっていて、このKaiber.aiはリンキン・パークの「Lost」のMVにも関わっていますよね。どちらも最新テクノロジーを使っているのにノスタルジーを感じさせるところが、非常にマイクらしいと思いました。

マイク・シノダ 「Lost」のMVでは、SHIBUYA、Pplpleasr、マシェイ・カシアラが制作を担当していて、Kaiber.aiは一部で関わっている。一方、「In My Head」のMVでは、Kaiber.aiが全面的に関わっている。Kaiber.aiはデザイン/AIの会社で、いろいろなものをクリエイトしてるんだ。彼らとはWeb3.0の話をしてる時に知り合って、他がまだ話ばかりで形になってなかった時に、先を行って新しいことをやってたところだ。彼らは単なるブロックチェーンではなく、デザイン・スタジオであり、テクノロジー・ディベロッパーなんだ。

―音楽だけでなく、映像でもマイクはジャンルや時代の境界線を壊していると思いました。クリエイティブというものを総合的にとらえていますよね。

マイク・シノダ 今日もちょうどこのことを他の人と話してたよ。自分が大好きな異なるものを結びつける時って、やり方は本当にいろいろあるんだ。リンキン・パークは最初のバンド名がHybrid Theoryだったくらいで、自分の大好きなものをブレンドしてハイブリッドなものにするというアイデアがあったから、デザインのことも学んだし、音楽のことも学んだし、他の模倣もしたけど、幸運にも恵まれ、自分たちも一生懸命やったから、結果として自分たちならではのものが形になったと思う。自分が大好きなものを積み重ねたものだけど、自分でもちゃんとそこに本質的なものを加えることができた。食べ物で例えると、いろいろな食材を組み合わせたら、結果、サラダに見えるかもしれないし、スープに見えるかもしれないよね。でも、赤いスープが出来たら、そこに何が入ってるのかはわからない。リンキン・パークでは、いろんな要素が一つになったものをやりたい時もあれば、いろんな要素がバラバラに見えるようにやりたい時もあった。これは見え方の話になるんだけど。

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