SZAロングインタビュー 葛藤を歌うシンガーの新たな季節

名声との向き合い方

昼食を終えると、SZAとカルダーは編集作業に戻った。長い夜に備えて、SZAのパフォーマンスショット選びをはじめる。指で銃を撃つポーズと、「Snooze」の“私は嘘をついたし、あのビッチを殺すこともできる”という歌詞を象徴する、大きく手を振るジェスチャーとのあいだで迷っているようだ。

SZAに関する議論が、彼女の多彩な感情と才能を軸に展開されるかどうかは筆者にはわからない。日記のような誠実さが称賛されることもあれば、それによって批判されることもあるからだ。『SOS』がリリースされたばかりの頃、SZAと彼女の失恋に共感する女性たちは、未熟だとSNS上で非難されていた。そうした人たちがSZAに「サッドガール」のレッテルを貼り、TV出演を逐一批判し、過去の恋愛をほじくり返したのだった。だが、彼女を批判する人も、称賛する人も、この編集室で何が起きているかは知らない。SZAが正確さ、ビジョン、広いマインド、技術的手腕を注いで自身のアートをつくっていることを。SZAを崇める熱烈なファンがいるのは事実だ。だが、果たしてSZAは、その人気に見合った尊敬を得ているのだろうか? 多くの人はSZAのことを見て楽しんでいるが、それは彼女という人間を本当に見ていることになるのだろうか?

SZAは、転落や失敗を恐れているわけではない。それによって衆目にさらされるのが嫌なのだ。「見られること」とはなんだろう? その瞬間、ドレスアップして、リムジンからレッドカーペットに降り立ったときの記憶がSZAの頭のなかでよみがえった。振り返って歩き出そうとした瞬間、動けなくなった。有名人として「見られること」のあまりの孤独さに、体が凍りついてしまったのだ。


Photo by Gianni Gallant
DRESS BY DI PESTA.

「いつだって世間は、『好きで選んだ道なんだから』的なことを言う」と、SZAはトレーラーの外でタバコを吸いながら言った。「だから怖いの。だって、私が選んだわけじゃないから。私は、音楽をつくり、アートを分かち合うという道を選んだだけ。私は大学を中退しているし、ひとつの仕事をずっと続けることもできなかった。それでも、スマートでクリエイティブな人間だということ、パーパスと役割があることをわかってもらいたいの」。

お金が欲しいなら、ドラッグを売ったり、かつてのSZAみたいにパーテンダーやストリップダンサーなど給料のいい仕事につけばいい。「それが目的じゃない」とSZAは言う。「権力がほしいわけでもない。私自身のためなの。これでいいんだ、って思えるようになりたいから」。

From Rolling Stone US.

Produced by RHIANNA RULE. Production Manager: XAVIER HAMEL. Photography direction by EMMA REEVES. Styling by JARED ELLNER for THE ONLY AGENCY. Hair by DEVANTE TURNBULL. Makeup by DEANNA PALEY. Nails by JOHANA CASTILLO. Tailoring by ALLISON ACHAUER. Contributing stylist to SZA: ALEJANDRA HERNANDEZ. Production assistance by PETER GIANG and TCHAD COUSINS. Lighting Director: BYRON NICKLEBERRY. Photography assistance: DOM ELLIS. Digital Technician: JUSTIN RUHL. Styling assistance: BROOKE FIGLER, MAYA SAUDER. Post production by ANGIE MARIE HAYES for THE HAPPY PIXEL PROJECT INC.




SZA
『SOS』
発売中
ボーナストラック2曲追加収録 / 歌詞対訳付き
再生・購入:https://SZAsmji.lnk.to/SOS

グラミー賞ノミネート・アーティスト特集(Sony Music Japan International)
https://www.sonymusic.co.jp/PR/grammys/info/559551

Translated by Shoko Natori

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