沢田研二を描いた究極のノンフィクション、担当編集者と辿る完成までの道のり



流れているのはこの番組の後テーマ、竹内まりやさんの「静かな伝説」です。

週刊文春の連載も知っていたんですけど、単行本まで待とうと思って楽しみにしておりました。で、読んだら想像を遥かに超える本でした。こんなにたくさん取材しているのか!?というのが最初の驚きです。1つの曲、1枚のアルバム、1つの舞台、1枚の写真、1つの番組、なぜこの曲だったのか、なぜあの格好だったのかとか、なぜこの人選だったのかとか、なぜああいう話をしたのか、なぜと何をという問いかけが嵐のように連なっているんですね。

内藤さんは真珠のネックレスのようだと話されてました。僕はそんなに綺麗な言葉は思いつきませんでしたが、次から次へとそういう光が沢田研二、ジュリーに向かって当てられていくんですね。あらゆる面からあらゆる角度から語っている、そういうノンフィクションのお手本のような、究極のノンフィクションと言っていいでしょうね。

ノンフィクションで一番大事なのは本人の話よりも、周辺の取材の質だと思うんです。本人の話が出てくると、そこに頼ってしまったり、それが違う歩き出し方をしてしまうのでバランスが悪くなるんですけど、沢田研二さんが話さない、登場しない、取材を受けないということがこういう本を産んだんでしょうね。こんなに周りの人の話が意味を持って、ドラマチックでロマンチックな本は初めて読んだ気がしました。著者はもちろん、全員に愛情があるんですね。こういうスターは二度と出てこないでしょうし、沢田研二に関してこういう本は書けないでしょう。そんな本が登場しました。



<INFORMATION>

田家秀樹
1946年、千葉県船橋市生まれ。中央大法学部政治学科卒。1969年、タウン誌のはしりとなった「新宿プレイマップ」創刊編集者を皮切りに、「セイ!ヤング」などの放送作家、若者雑誌編集長を経て音楽評論家、ノンフィクション作家、放送作家、音楽番組パーソリナリテイとして活躍中。
https://takehideki.jimdo.com
https://takehideki.exblog.jp

Rolling Stone Japan 編集部

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