沢田研二を描いた究極のノンフィクション、担当編集者と辿る完成までの道のり



田家:1975年8月発売「時の過ぎゆくままに」。ドラマ『悪魔のようなあいつ』の主題歌。第一章は沢田研二を愛した男たち。東アジアのBLが凄まじい勢いで世界を席巻している。BLとはボーイズラブ。いやー、驚きましたね。

内藤:最初、島崎さんは「沢田研二とBL」というテーマで原稿を出していただいたんですけど、編集長が愛した男たちに変えたことで妖艶な感じになるという(笑)。今、BLって一大コンテンツだと思うんですけど、日本における元祖が沢田研二なんじゃないかと島崎さんがおっしゃっていて。沢田研二さんとショーケンさんの関係をBLチックに見立てて、当時の女子はキャーキャー言っていたんだと。それが今のBLカルチャーに繋がっているのでは?という話から、この連載が始まる。二章目以降は時系列になっているんですけど、当初はカルチャーとか、ファッション、音楽みたいな感じでテーマごとにやっていこうという話だったんですよね。沢田研二さんをネックレスの糸にして、そこに真珠をつけていくようなイメージで始まって。

田家:いい表現だなあ(笑)。

内藤:これは島崎さんがよくおっしゃっています(笑)。というイメージで始まったんですけども、一章を書いた時に、島崎さんはここからいくらでも書けると思ったらしくて、二章以降は時系列でいける!という話になって、ちょっと変わっていったんです。

田家:沢田研二を愛した男たちの中には、久世光彦さんとか、加瀬邦彦さんとか、内田裕也さん。女性ですけど、石岡瑛子さんとか。本当にいろいろな方たちが登場するので、この後の章の話を続けていきたいと思いますが「時の過ぎゆくままに」のことは第五章、歌謡曲の時代に詳しく書かれています。



田家:流れているのは1967年2月発売、ザ・タイガース「僕のマリー」。デビュー曲ですね。内藤さんは島崎さんの41歳の下という、この年齢差の表現すごいですね。そういう担当の方にとってタイガースはどういう存在だったんですか?

内藤:恥ずかしながら全然知らなくて、私は2018年に入社したんですけど、ちょうど入社してすぐ沢田さんのコンサートドタキャン騒動があったんですよね。その事件というか、取材班みたいなものに入って、なぜドタキャンに至ったのかをやったことで、初めて沢田さんを知ったぐらいの感じで。

田家:本当に膨大な方が登場するんですけど、その中には連載をやっている時に共感されたんでしょうね、私の持っている資料を使ってくださいと提供される、そういう方たちがいっぱい出てきますもんね。

内藤:記事の切り抜きだったり、行ったコンサートの半券を未だにずっととっておいてらっしゃる方がいて、使ってくださいみたいな感じで送られてきて。週刊誌とか雑誌の記事って流れていくものなので、今から遡るのは限界があるんですよね。当時とっていらっしゃった方によって、あ、こんな記事があったんだというのが初めて分かるみたいなことがいっぱいあって。それにすごい助けられましたね。

田家:しかも島崎さんはそういう方に会いに行って、直接お話を聞いているのも本当に驚きました。そこまで取材しているんだという、ともかく膨大な数が登場している。例えばメンバーの瞳みのるさんとか、夏木マリさんとか、明治学院の教授の藤本由香里さんとか、日本一有名なファン・國府田公子さんとか、佐藤剛さんとか、亀和田武さん。日本一詳しい研究者・磯前順一さんとか、この人のザ・タイガースの本読みましたけど、おもしろいかったですね。びっくりしたのは重信房子さんが出ていたこと。タイガースの解散武道館の時、九段会館で赤軍派の集会が行われていた、それを本当にやっていたのかを重信さんに確認している。

内藤:そうなんですよ。

田家:いやー、驚きました。

内藤:島崎さんならではの人脈というか、重信さんに今話を聞いて、しかもタイガースの話を聞くというのが。

田家:しかも重信さんがタイガースを好きだったんだという話をされている。

内藤:ミーハーの重信らしいって書いているんですよ(笑)。その総括も島崎さんじゃないと言えないよなと思いながら。最初から島崎さんがこだわってらっしゃったのは、ファンの人の話を訊きたいというところで。当時の少女たち、彼女たちが熱狂的にハマったのに彼女たち目線での資料みたいなものが全然残っていない。後に出てくる音楽評論家の湯川れい子さんが、ビートルズが来日した時に女の子たちがキャーってみんな騒いでいて、それを大人たちがおとなしくしろー!みたいな感じで言っているというのを見た時に、私は一生キャーって言い続ける側でいようと思ったみたいな話をされていて、まさにそれと同じスタンスというか、キャーと言っている人たちから見たタイガース、ジュリーってどういう人だったんだろうというのをぜひ残しておきたいという話があって。それは私もすごく共鳴していたのでここは残せてよかったなと思っていますね。

田家:果ては浜村淳さんが登場した。なんでだろうと思ったら、京都音協の全関西ロックバンドコンテストにタイガースの前身のファニーズが出演していて、その時の司会が浜村淳さんで、浜村さんがファニーズのボーカルということを覚えてらした。これも驚きました。

内藤:タンバリンがカーっと弾けて、お客さんが熱狂した。よく覚えてらっしゃるなと。

田家:それだけ印象深かったんでしょうね。こういうエピソードをあげていくと、この番組は何時間あっても終わらないということで、次は第二章の中からお聴きいただこうと思います。熱狂のザ・タイガースの章の中から、登場している曲、沢田研二さんの「あのままだよ」。作詞が岸部修三さんです。

Rolling Stone Japan 編集部

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