英アンドリュー王子の売春疑惑に再びメス、性犯罪者エプスタインの犠牲者たちが証言

アンドリュー王子(MAX MUMBY/INDIGO/GETTY IMAGES)

8月21日に米A&Eで放映された最新ドキュメンタリーは、エプスタインが女性や少女に故エリザベス女王2世の息子アンドリュー王子と売春させていたという疑惑に再びメスを入れた。

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2019年8月、性的人身売買容疑の裁判を控えたジェフリー・エプスタイン被告は、刑務所内で不可解な死を遂げた。右腕だった女性ギレーヌ・マックスウェルは、性的人身売買に加担した罪で禁固20年を食らった(警備の緩い刑務所では密告の心配もない)。それからというもの、エプスタインと関わりのあった富と権力をむさぼる悪名高き小児性愛者どもの周りには、いまも疑念と混乱と怒りが立ち込めている。正義はいまだ果されていないようで、ビル・クリントン、ビル・ゲイツ、ドナルド・トランプといった世の実力者は、21世紀最悪の性犯罪者に挙げられる人物との関わりを弁明する必要には迫られていない。

エプスタイン関係者が報いを受ける姿にもっとも近い例といえば、2019年にニュース番組『BBC Newsnight』が英国王室アンドリュー王子と行った、かの有名なインタビューだ。思わず顔をしかめるインタビューは、A&Eで放映された最新ドキュメンタリーシリーズ『Secrets of Prince Andrews』の中核を成している。

「BBCと王室が絡むと、必ず誰かがクビになります」。当時番組の司会だったエミリー・メイトリスはドキュメンタリーでこう語り、「まさかそれが王子だとは思ってもいませんでした」と付け加えた。

8月21日、二部構成で放映された3時間ドキュメンタリー『Secrets of Prince Andrew』は、特ダネインタビューを手がけた『BBC Newsnight』の撮影班、王室関係者やアンドリュー王子の友人、元政治家、エプスタインの犠牲に遭ったヴァージニア・ジェフリーさんの弁護人デヴィッド・ボイズ氏とシグリッド・マコーレー氏、同じくエプスタインの犠牲者で元モデルのリサ・フィリップスさん他多数のインタビューが盛り込まれている。残念なことに、2003年のヴァニティフェア誌に華々しく掲載されたエプスタインの特集記事を利用して、あまたのドキュメンタリーを手がけたジャーナリストのヴィッキー・ワード氏や(ただしガーディアン紙も指摘しているように、ワード氏は2011年にヴァニティフェア誌のブログで「意外にもエプスタイン氏を悪く言わず」、彼の性犯罪を「性的悪ふざけ」と書いている)、エプスタインの多くの犠牲者たちの弁護を引き受けたリサ・ブルーム氏(2016~17年にかけて、性的不適切行為の疑惑にまみれたハーヴェイ・ワインスタイン氏に法的助言をしたことのほうが有名)のインタビューも登場する。ここは是非ともジュリー・K・ブラウンを出してほしかった。

ドキュメンタリーは時間軸を行き来しながら、アンドリュー王子の関係者が2018年以降、『BBC Newsnight』のプロデューサーだったサム・マカリスターとインタビュー実現に向けて交渉した様子を振り返っている。当初関係者は、王子が運営する慈善団体「Pitch@Palace」をプロデューサーに売り込んでいたが、エプスタイン関連の質問には度々「NG」を出していたためBBC側が見送った。アンドリュー王子の恵まれた王室生活もざっくりと語られている。エリザベス女王の2番目の息子として生まれたアンドリュー王子は「スペア」、すなわち王位継承権第2位で、そのため素行が怪しくなっていった――ハリー王子も同じく王位継承第2位だが、こちらのほうは品行方正なイメージを保っている。王室海軍で戦ったフォークランド戦争から帰還すると、アンドリュー王子は一部の人々から「英雄」とみなされ、そうした名声を利用してモデルや女優と浮名を流し、タブロイド紙からは「好色アンディ」とあだ名された。

スペアだったアンドリュー王子は年間24万9000ポンド(チャールズ王と比べれば微々たるもの)の手当てをもらい、不分相応な暮らしをしていた。そんな中、著名人や富豪らとつるんでいたマックスウェルと出会ったことで、望んでいた豪華な生活(あるいは取り巻き?)を手に入れた。アンドリュー王子はマックスウェルからジェフリー・エプスタインを紹介され、エプスタインを通じてビル・クリントンに紹介された。『Secrets of Prince Andrew』では、エプスタインとマックスウェルが英国王室の地所バルモラル宮殿とサンドリンガム宮殿に、アンドリュー王子の客として招かれた経緯が語られている。2人はウィンザー宮殿で行われたプライベートの誕生会にも出席し、王室メンバーにも紹介された。アンドリュー王子が貿易特使の公務で海外訪問した際には、納税者の税金でエプスタインも同行した。エプスタインはアンドリュー王子の元妻サラ・ファーガソン侯爵夫人の借金も肩代わりした。とある人物の話では、エプスタインは一度こう漏らしていたそうだ。「自分よりも性欲の強い人間が1人だけいる。アンドリューだ」。

Akiko Kato

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