英アンドリュー王子の売春疑惑に再びメス、性犯罪者エプスタインの犠牲者たちが証言

バッキンガム宮殿の元報道官ディッキー・アービタ氏(すごい名前だ)いわく、「(エプスタインが)アンドリューの客として招かれたというのは、おそらくプライベートの行事でしょう。つまり、アンドリューは女王から招待の許諾を得ていたことになります。女王は、子どもたちがOKなら大丈夫、と信用していたのでしょう。1990年にエプスタインを知っていた人などいたでしょうか? アンドリューはエプスタインにすっかり夢中でした。彼は魅惑の休日も、ヨットも提供してくれる。女の子もあてがってくれるのですから」。


2000年2月12日、フロリダ州パームビーチでトランプ氏が所有するマー・ア・ラーゴのパーティにて 左からメラニア・トランプ氏、アンドリュー王子、グエンドリン・ベック氏、ジェフリー・エプスタイン(DAVIDOFF STUDIOS/GETTY IMAGES)

2008年、エプスタインは児童に売春をあっせんした容疑で有罪を認め、司法取引に応じて世間を騒がせた。ただし警察当局が36人の少女(大半が未成年)に事情聴取を行ったところ、みなエプスタインから性的虐待を受けたと供述した。エプスタインは13カ月の刑期を務めた後、まんまとニューヨーク社交界に復帰した。

インタビューに応じたタブロイド新聞記者アネット・ウィザーリッジ氏は、2010年12月にニュース・オブ・ザ・ワールド紙から電話を受け、アンドリュー王子がニューヨーク市にいるとのタレコミ情報を得たと語った。ウィザーリッジ氏はカメラマンに電話し、一緒にアッパーイーストサイドにあるエプスタインの邸宅に向かうと、英国王室の警備隊が家の外にいるのを目撃した。ウィザーリッジ氏とカメラマンは邸宅の前で張り込みをした。

「その間、若い女の子が1時間半か2時間半おきに、入れ替わり立ち替わり中に入っていきました。2人ずつ入っては1人出てくるといった感じでした」と、ウィザーリッジ氏はドキュメンタリーで語っている。

翌日現場に戻ってみるとアンドリュー王子とエプスタインが家を出るところで、2人の後を車で街中尾行した。最終的にカメラマンは、おしゃべりしながらセントラルパークに連れだって行く2人の姿をフィルムに収めた。写真は「アンドリュー王子と小児性愛者」という見出し付きで一面を飾った。

写真を見たヴァージニア・ジェフリーさんは怒りにふるえた。エプスタインの性的人身売買の犠牲者だったジェフリーさんは、その後メイル・オン・サンデー紙とのインタビューに応じ、2001年にアンドリュー王子と撮った写真について語った。マックスウェルと並んで立つ王子が17歳のジェフリーさんの腰に手を回している、あの写真だ。ジェフリーさんは後日裁判で、17歳の時にエプスタインからアンドリュー王子と売春させられたと主張した。

「ヴァージニアさんは無理矢理アンドリュー王子とセックスさせられました。本人の意志とはまったく関係なしにです」と、ジェフリーさんの弁護人シグリッド・マコーリー氏はドキュメンタリーで主張した。「彼女は大人2人から、アメリカ国内だけでなく海外でも売春させられていました。丁重に客と性交するよう要請されると、彼女は応じるしかありませんでした。悲しいかな、彼女の場合はかなり頻繁にそうせざるをえなかったのです」。

最終的にジェフリーさんはアンドリュー王子を訴えた――王子はしばらく召喚状配達人をかわしていたが、結局印籠を渡された。2022年に王子は民事訴訟で訴えられ、1200万ポンド(1630万ドル)でジェフリーさんと和解した。


ジェフリー・エプスタイン、ギレーヌ・マックスウェル、アンドリュー王子などから暴行を受けていた10代のころの写真を掲げるヴァージニア・ロバーツ・ジェフリーさん(MILY MICHOT/MIAMI HERALD/TRIBUNE NEWS SERVICE VIA GETTY IMAGES)

そして問題の『BBC Newsnight』のインタビューだ。インタビューを担当したエミリー・メイトリス氏は直前に「恐怖で」気分が悪くなったそうだが、プロらしく目の前の王室メンバーの本性を暴く姿からは想像もできない。インタビューの間アンドリュー王子は顔をしかめ、口ごもりながら、ジェフリーさんに会った記憶はないと主張した。自分は汗をかかない体質なので(少なくともインタビュー当時は汗ダラダラだった)彼女の話は嘘だ、一緒にナイトクラブで踊ってから性的行為に及んだという夜はピザ・エクスプレスにいた、とも主張した――この2つの弁明で、王子は物笑いの種になった。

インタビュー中、アンドリュー王子と関係者はうまくかわしたと思い込んでいたようだ。というのも、メイトリス氏も回想しているように「王子は話し続けました。ご満悦なようすでした」 マカリスター氏いわく、王室側近も「最高の出来だ」と語っていたそうだ。

1週間後、アンドリュー王子は公務を解かれた。後に女王は王子の役職と称号を剥奪した。

Akiko Kato

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