甲本ヒロトが語る成功の考え方、さかなクンとの交流からアントニオ猪木への想い

―最初におっしゃったように、ツアーが終わってまた振り出しから始めようと思ってレコーディングに向かうわけですか。

いや、意識はしてないよ? でもやりたいことっていうのは、バンド演奏なんです。それは意識をしようがしまいが、本当にそうなんですよ。だから、ほっとかれたらそりゃやるよ、やる(笑)

―曲も作れない、ギターも弾けないというところから始まったわけですけど、前回のインタビューのときはブルースハープを一生懸命練習して身に着けたという話を聞かせてもらいました。

そう、それはね、親にバンドを反対されてから、こっそり1人でやってた。「これだけは隠れてできる」と思って。それしかやることないんだもん。

―今は曲がいつの間にかできているっておっしゃいますけど、最初はどうやってオリジナル曲を作るようになったんですか?

高校3年のときに友だちがバンドをやっていたんだけど、高校が割と進学校で、まわりがみんな受験勉強を始めて、バンドが歯抜けになっていくんですよね。それで友だちのバンドのボーカルが抜けたので、「ヒロトはたしかロックよう聴きよるよな。うちのバンドで歌ってみる?」って声を掛けられて、夏休みの自主コンサートか何かの穴埋めで僕は2、3曲歌うことになったんです。それが最初なんだけど、「やってもいいけど、俺はオリジナルしか歌わんよ」って言って。1曲も作ったことないのに(笑)

―普通、穴埋めなんですから「この曲歌って」って言われますよね?

言われたけど、「でも俺はオリジナルやるから」って言って。「曲持っとるん?」「ん? つくればええんじゃろ?」って、それで1曲作ったんです。もちろん、何もできないから鼻歌で。そしたらギターの人がコードを拾ってくれて、僕は鼻歌をそのまんまマイクを持って歌って、それをバンドが合わせてくれて、1曲できた。でもそれだけじゃ曲が足りないから、カバー曲もやろうって言って。そのバンドはハードロックバンドだったんで、ディープ・パープルとかカバーしましたよ。

―ええっ!? ヒロトさんがディープ・パープルを歌ってるの見てみたいですよ。「スモーク・オン・ザ・ウォーター」とか歌ったんですか?

いや、たしか「チャイルド・イン・タイム」だったと思う。あの曲長いんだよね。でも、「どうせカバーするなら、ロックンロールやろうよ」って言って、「ブルー・スエード・シューズ」とかもやったよ。ハードロックバンドなのに(笑)

―全然方向性が違う(笑)

後で聞いたら、マーシーも初めてやった曲は「ブルー・スエード・シューズ」だって言うから、「同じだよな~!」って。

―なるほど。じゃあそこから、曲は鼻歌で作るようになったんですね。

そう、今でもそんな感じです。鼻歌です。

―そういえば、80年代に雑誌でブルーハーツのレコーディング風景が記事になっていて、スタジオでみんなの前で新曲を発表するって書いてあったんですよ。そのときの写真でヒロトさんがギターを弾きながら歌っているのを初めて見たんですけど、写真のキャプションに「この瞬間がすごく恥ずかしいんだよな」とか書いてあった覚えがあるんです。今はどうですか?

今も恥ずかしいよ(笑)。ギターは東京に出てきてだいぶたってから質屋にぶら下がってたモーリスのギターを1万円ぐらいで買ったんですよ。ギターは今でもちゃんとは弾けないんだけど、なんとなく自分の曲にコードを付けられるようにはなったんです。だからブルーハーツの頃はコードを付けた状態で、曲をスタジオに持って行くようになった。でも全然詳しくないから、3コードだったり多くても5つだったりするんだよ。テンションコードとかわかんないし。未だに僕の曲のコードが少ないのは、コードを知らないからです。

―本当ですか? でも鼻歌で歌った曲が3つとか5つのコードに収まらないこともあるのでは?

なんとかなるんですよ。だいたいコードを5つ使えばなんとかなる。

―曲の発表の仕方は変わらないですか?

今もそんな感じです。だから僕はゆっくりしかギターを演奏できないんですよ。ゆっくり手元を見ながらポロンと弾いてボソボソっと歌うから、みんなは「ゆっくりな曲なのかなあ」って思うわけ(笑)。それこそ、「(超ゆっくりギターを弾く振りで)暴~走~ジェリー~ジャーンジャーン」みたいな感じでやるから、みんなは「どうするつもりなんだろう?」って聴いているんだけど、「これを100倍の速さで演奏してくれ」ってみんなに頼む(笑)

―ははははは(笑)。それで演奏ができたら、その速さで歌うんですね。

そうそう。みんながコードとメロディを覚えたら、「じゃあいくぜ! ワンツースリーフォー!」ってやる。僕はぶっとんだ爆裂曲を作るんだけど、弾けないからみんなの前ではゆっくり演奏して聴かせるんです。


あああ

Rolling Stone Japan 編集部

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