―「珉亭」で俳優の松重豊さんと一緒だったことは有名ですよね。確か、2人が「珉亭」に入ったのは同じ日だったんですよ。向こうは博多から来ていて、僕は岡山から。「東京で何すんの?」って訊いたら、そのとき豊は「映画を作りたい」って言ってた。映画を撮る練習をしていて、学生時代に自主映画を作るっていうから、何か手伝えるか聞いたら「主役を頼む」って言われて
(笑)。
―えっそうなんですか?うん、少しだけ出たよ。その作品は完成しなかったけどね。でもロケとかやったし、面白かった。
―ヒロトさんは演技をしてみたいという気持ちもあったんですか?いや、全然思ってない。豊がやるなら協力するっていうだけです。
―逆に、松重さんが音楽のことで関わったことってあるんですか?当時僕がやっていたバンドがザ・コーツって言うんですけど、その映画の中で、豊がザ・コーツで歌うっていうシーンがあった。だから、お互い役を交代したんです。僕が役者をやって、豊がボーカルをやるっていう
(笑)。
―すごい! それってどこにも公開されてないですよね?されてないね。
―そんなことがあったんですね。松重さんとは今も交流がありますか?うん、連絡は取り合えるよ。でも向こうがすごく忙しくなっちゃってるしね。
―お互い、上京してきて大成功しましたね。大成功っていうか……ちょっと前に久しぶりに会ったときに、「俺たち最初から大成功してたじゃないか」っていう話をしたんだよ。「俺たち、東京に何しに来た? 俺はバンドをやりに、豊は映画を作りたいって言いながら演劇の世界に入っただろ? やりたいことやったじゃん。バイトしながらでもやれてたじゃん。あれが成功じゃん」って。だからずっと成功してる。バンドをやることがゴールであって、役者にとって舞台に立つことがゴールじゃないですか? その後、ギャラをなんぼもらったとか、そんなのはおまけですよ。
―そこで夢が実現できているから、そこから先はずっとおまけみたいなもの?ずっとゴールに立ってます。でも、演奏が終わった時点でまた振り出しに戻るんですよね。だからまたステージに行く。