旧統一教会の過激分派「サンクチュアリ教会」指導者が語る、ライフル銃崇拝の理由

常軌を逸したレトリック

現在、亨進氏は1月6日の「狂気」への関与を躍起になって否定している。本誌の質問に対し、亨進氏は自分と信者たちが讃美歌や愛国歌「ゴッド・ブレス・アメリカ」などを「平和的に歌っていた」最中に催涙ガスを浴びせられたと主張する。「私たちはただ、修正第1条に規定されている、平和的に集会する権利を行使していたにすぎません」と答えた。

その一方で、亨進氏は事件直後に1月6日は「巨人兵士ゴリアテの無敵のオーラ」が「粉々に打ち砕かれた」ことを歴史が立証するだろうと述べ、1773年のボストン茶会事件も「当時は非難された」と言い添えた。


ペンシルベニア州ニューファンドランドにあるWorld Peace and Unification Sanctuary (世界平和統一正殿)で行われた礼拝中に弾が入っていない実銃を握りしめる男性。JACQUELINE LARMA/AP IMAGES

法執行機関や事件を調査している下院特別委員会からの連絡はない、と亨進氏は言う。

亨進氏は、苦々しい思いでバイデン氏の大統領就任式を見守った。2021年1月21日の動画では、バイデン氏の大統領就任を中国共産党の勝利と嘆き、「中国共産党のスパイ」であるバイデン氏が「かつてのユダヤ・キリスト教の共和国としてのアメリカを強奪した」と非難した。

亨進氏は武力による抵抗を説き、愛国右翼団体のオース・キーパーズの創設者を引き合いに出した。「神は、我々が神の手足となることを望んでいます」と語る。「オース・キーパーズのスチュワート・ローズが言ったように、トランプ派の人々はただちに武装市民集団や自警団——名称は何でもいいのですが——の一員に加わらなければいけません」

亨進氏は、いまは「カルト教団や過激派、あるいは国内テロ組織と呼ばれることを恐れてはいけません」と話す。長きにわたって一族がカルト教団と呼ばれてきたことを指摘しながら、「我々の仲間になってください。過去を乗り越えましょう」と言い添えた。

銃崇拝者の亨進氏は、昔からバンディ一族への憧れを抱いている。バンディ一族とは、過去に何度か政府と武力衝突をしたことのある武装市民集団のリーダーである牧場主アモン・バンディ氏の一族を指す。亨進氏は、「連邦政府による権力の乱用」に立ち向かうために必要な「人格と勇気」の体現者としてバンディ氏を称えた。亨進氏は「スターリン主義的な呪いのマシンがやってくる」と警鐘を鳴らす一方で、動画の中で「バンディ氏の牧場のようなものが100あるべきだ」と、集団的な抵抗こそが唯一の防衛であると主張する。さらには、バンディ氏と政府の武力衝突について「こうしたものがアメリカ中で起きるべきです。そうすれば、ひとつを制圧しようとする政府は、全国民を敵に回すことになるのですから」と続けた。

常軌を逸したレトリックにもかかわらず、サンクチュアリ教会はいまもMAGA共和党員を引き寄せ続けている。2021年5月には、ペンシルベニア州で共和党の知事候補に選ばれたダグ・マストリアーノ氏がサンクチュアリ教会でスピーチを行う予定だった。最終的にスピーチは実現せず、マストリアーノ氏はトランプ氏の元顧問弁護士ルディ・ジュリアーニ氏と選挙資金集めイベントに参加した。亨進氏はマストリアーノ氏との面識はないものの、「我々は、マストリアーノ氏と彼の政策を支持しています」と話した。

同年10月に行われたRod of Iron Freedom Festivalでは、バノン氏のみならず、極右派の元上院議員候補で右翼団体のプラウド・ボーイズと密接な関係にあるジョーイ・ギブソン氏がゲストスピーカーとして招かれた。ダニエルズ氏は亨進氏と談笑し、金色のAR-15を抱えて自撮りをした(これは国進氏の武器メーカーが製造したもので、独特の色合いは窒化チタンコーティングによるもの)。2022年のイベントの参加者はまだ確定していないものの、元大統領補佐官のセバスチャン・ゴルカ氏や元国連大使のアラン・キーズ氏などの参加者名が挙げられている。

亨進氏は、自分と教団は「政治的悪魔主義」と戦っていると考える。MAGA運動に身を投じた理由は、「人間の自由への渇望、そして少人数の秘密結社が罰を受けずにこの国を支配している状態に終止符を打つため」と答える。

神の王国の建設を実現するうえでMAGA支持者は役に立っているのかと尋ねると、亨進氏は「これらの関係性を神がどのように活かされるかはわかりません」と明言を避けた。その一方で、「思想や心を同じくする人々と団結して——王国を実現するための神の意志を追求していきたいです」と語った。

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from Rolling Stone US

Translated by Shoko Natori

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