旧統一教会の過激分派「サンクチュアリ教会」指導者が語る、ライフル銃崇拝の理由

「トランプ最高司令官の訴えに応じて、我々は1月6日に立ち上がる」

トランプ氏が敗北した当初、亨進氏はショックで打ちのめされた。選挙日の翌日に「赤い蜃気楼」が消えてゆくなか、亨進氏は「いまとなっては、我々人間の力ではどうすることもできない! トランプがウィスコンシン州、ミシガン州、あるいはネバダ州で勝利できるかどうかは、神の恩恵にかかっている。すべては、イエス・キリストと共にあられる人類の真の父次第なのだ。王国よ、祈り続けよ!」と投稿した。

だが、その翌日には「トランプの勝利! アメリカはこの詐欺行為を認めるわけにはいかない! トランプこそが我々の大統領だ!」と新たに投稿し、敗北したトランプ氏の先陣を切って信者たちのあいだに「大きな嘘」を拡散した。

そうすることで亨進氏は法と伝統に背き、ジョー・バイデン氏への平和的な権力移行を妨害するという政治運動の真っただ中に身を置いていた。首都ワシントンで行われたミリオンMAGAマーチやペンシルベニア州の州都ハリスバーグで行われた「Stop the Steal(詐欺行為を止めろ)」集会にも参加した。その後、亨進氏は12月12日に米連邦最高裁判所の前で行われたジェリコ・マーチにも参加し、神の介入によって2020年の大統領選挙の結果が覆されるようにと祈りを捧げた。

さらには、ペンシルベニア州の選挙人団による投票のやり直しの必要性を訴えた。2021年1月3日には、同州議会議事堂の議長を務めるブライアン・カトラー氏の自宅の前で同州での再選挙を要求した。

問題の1月6日が近づくにつれて、亨進氏は「Black Robed Regiment(黒衣の連隊)」との連携を強めるようになった。Black Robed Regimentとは、アメリカ独立革命を支援した過激派の牧師たちを揶揄するためにイギリスが用いた呼称を拝借した、右派宗教家たちの緩やかな連合を指す。

まもなくして亨進氏は、武力によって行動することの必要性を喧伝しはじめた。2020年12月30日に投稿された動画には、兄の銃砲店の壁の前で祈る姿が映し出されている。アメリカ独立革命を願う亨進氏は、「悪に立ち向かった建国の父たちの精神」をトランプ氏に与えたまえと神に祈った。その後も「トランプ最高司令官の訴えに応じて、我々は1月6日に立ち上がる」と述べ、支援者たちの加護を神に求めた。

事件前日の2021年1月5日。銃と同じくらいオートバイに夢中の亨進氏は、バイカーギャングさながらの「Rod of Iron Riders(鉄の杖ライダース)」を率いて首都ワシントンに集結。亨進氏は集会の目的が「首都の偵察」であったと綴り、偵察の様子を捉えた短い動画を投稿した。そのときの亨進氏は、迷彩柄に塗られたドクロのマスクを被っていた。

1月6日、亨進氏は夜明け前の暗闇のなか、ナショナル・モール(訳注:首都ワシントン中心部に位置する国立公園)に姿を現した。暴徒たちが議事堂へと押し寄せるなか、亨進氏は催涙ガスを浴びるほど近い場所で暴動に参加していた。事件当日の亨進氏の行動の詳細は明らかにされていないが、同じく暴動に加わっていたデイヴィッド・カナギーという教団の熱心な信者は、警官を圧倒する信者たちの勇姿を書き留め、サンクチュアリ教会のホームページ上で公開した。

カナギー氏の手記——とりわけ議事堂に討ち入ろうとする試みが2回目に失敗したときのことを綴った箇所——からは、亨進氏に対する心酔っぷりが垣間見られる。「人々が左側の観覧席の階段を駆け上がるのが見えた。私は、そのあとに続いて階段を上った」とカナギー氏は綴る。さらにカナギー氏は、足場が不安定だったことを言い添えた。「そんなことは気にならなかった。国王(亨進氏)の力になれるのなら(中略)人々の体重に耐えかねて足場が壊れたとしても、たしかにそれは悲劇的かもしれない。だが、自らの命を捧げる方法としては悪くない」

Translated by Shoko Natori

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