旧統一教会の過激分派「サンクチュアリ教会」指導者が語る、ライフル銃崇拝の理由

「自分は神の代理人」

終末論を説く亨進氏は、天の王国が地上に建設される日は近いと予言する。新たな王国が建設されたあかつきには、武装した信者たちがこの国の統治を支援すると主張しているのだ。「イエス・キリストに仕える者たちは、自ら鉄の杖を使って家族や近隣の人々、国を守る責任を負っている」と、亨進氏は自著『Rod of Iron Kingdom(鉄の杖の王国)』の中で述べている。

亨進氏は、未来の王国の国王は自分(および子孫たち)であると考える。その国の名前は「United States of Cheon Il Guk(天一国合衆国)」、通称CIG。さらに亨進氏は、CIGの憲法なるものまで用意しており、「いまは存在しないものの、CIGは実在の主権国家である。CIGは、待ち望まれた『終わりのとき』の完成形を示す」と定義している。CIGの憲法はアメリカ合衆国憲法とよく似ているが、人工妊娠中絶と同性同士の結婚を禁止し、亨進氏を国王に定めている点は大きく異なる。


2021年10月に開催された第3回Rod of Iron Freedom Festivalにてスピーチを行う亨進氏。(Photo by ZACH D ROBERTS/NURPHOTO/AP)

説教を行なっているときの亨進氏は、烈火のごとく激しくて攻撃的だ。AR-15を神の道具とみなす教団の指導者のイメージにいかにもふさわしい。

その一方で、会話をするときの亨進氏はもう少し穏やかだ。2021年にテネシー州郊外に建設された教団の保養所からビデオ会議アプリを介して本誌のインタビューに応じた亨進氏は、父親が再来のキリストであったのに対し、自分自身は神ではないと語る。むしろ、「世間でいうところのローマ教皇のような、神の代理人です」と明かした。亨進氏によると、サンクチュアリ教会の信者数は世界中でおよそ1万5000世帯にのぼるそうだ。

亨進氏は、サンクチュアリ教会をカルト教団とみなす人々には無関心だ。「まったく気になりませんし、それによって身動きがとれなくなるようなこともありません」と話しながら、何十年にもわたって旧統一教会がカルト教団と呼ばれてきたことを強調した。「私たちは、過去50年間このように呼ばれてきました」と亨進氏は続ける。「この手の迫害には、もう慣れているのです」

亨進氏は、CIGは「独裁国家ではなく、自由と責任に重きを置く王国」になるだろうと強調しつつ、教団の教義をいくつか引き合いに出した。「私たちは、同性愛は獣姦に等しい罪であると考えています」と語る一方で、「婚前のデートや性交渉も重大な罪です」と解説した。

CIGを建設するには、定義上は現在のアメリカ合衆国を転覆させなければならない。亨進氏は、それは武力ではなく「神の霊に導かれた人々の自己決意によって自然と建設されるでしょう」と話す。

だが、うわべだけは穏健な主張の背後には、教団が掲げる恐ろしいメッセージが込められている。具体的な説明を求められた亨進氏は、「鉄の杖」ないしAR-15は、「政治家たちを常に監視するための道具となるでしょう」と明かしたのだ。

かいつまんで言うと、亨進氏は終末論を信奉し、銃を崇拝し、過激な思想を掲げる武装教団の指導者なのだ。アメリカの非営利団体である南部貧困法律センターは、この教団を「アンチLGBTQカルト」と警戒している。

政治的な過激主義によって懐を潤してきた者は少なくない。文一族もそのひとつだ。亨進氏の教団では、銃は神聖なものとして崇められている。だが、兄のジャスティンこと国進氏にとってはビジネスでもある。

Translated by Shoko Natori

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