「ジミヘンの再来」と称される大器、タッシュ・サルタナの運命を変えた決定的瞬間

人生の転機となった誕生日プレゼント

高校卒業後、就職にはまるで興味がなかったサルタナは、21歳になるまでの4年間でドラッグを多数経験する。その内容については、様々なメディアが過去数年間で積極的に報じてきたが、サルタナはそのことに対して今も憤りを覚えている。

「些細なことを何年も取り上げ続けて、他の大勢のジャーナリストが一斉にそれを掘り起こそうとする」サルタナは早口でそうまくし立てる。「4年も前のことを、今になって蒸し返したって何の意味もない。マジックマッシュルームがどうこうとか、もういい加減にしろって感じ」


Photo by Giulia Giannini McGauran (AKA GG McG) for Rolling Stone Australia

高校を卒業したばかりの頃、サルタナがオープンマイクイベント行脚で雀の涙ほどの収入しか得ていなかったことを、母親は心配していたという。「(母親に)こう言われてた。『5ドルのCDを4枚売って20ドル稼ぐような生活じゃ、やっていけないでしょ?』でもこう思った。『そんなことない。より多くの人の前で演奏すればいいだけの話』」

ある日サルタナは、友人でありメルボルンを拠点とするデュオのThe Pierce Brothersが、Bourke Street Mallで行ったバスキングを見ていた。2人が手にしていたのは、ヒビの入ったアコースティックギターだった。「立ち止まる人は誰もいなくて、正直これじゃダメだって思った」。サルタナはそう話し、肩をいからせた。「このやり方じゃ、夢を実現することはできないと思った」

サルタナの18歳の誕生日に足を運んだ楽器屋で、同行していた父親は「何でも好きなものを1つ選べ」という、毎年恒例となっていた言葉を口にした。過去にはバンジョー、黒のFender Squireをプレゼントしてもらっていた他、サルタナが現在でもステージで使用している中古の12弦アコースティックギターも、誕生日に父に買ってもらったものだ。しかしその年のバースデープレゼントは、サルタナの運命を大きく変えることになった。惹かれていたバンジョーの代わりにサルタナが手にしたのは、Rolandの2トラックループステーションRC-30だった。



「(父は)『賢明な選択だとは思わないな。ロクに使わないだろうから』って言った」。しかし、サルタナは反論した。「絶対そんなことない、そう断言した」。そのループステーションは、サルタナにとって不可欠なツールとなった。バスキングのたびに数千ドルを稼ぐようになったサルタナは、弦の買い替えや新しい楽器の購入、航空券の手配にも親の援助を必要としなくなった。ファンベースを大きく拡大していったサルタナは、北米ではMom + Popと、その他の地域ではLemon Tree MusicおよびSonyと契約を交わした。

Translated by Masaaki Yoshida

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