河村隆一がソロ作を通して語る、故YOUやGEORGEらとの交流

故YOUとの出会い

-けっして悪いことばかりではないと。さて、今回のアルバム『BEAUTIFUL LIE』についてもお話を伺いたいのですが、これを制作されたのはいつ頃だったのでしょうか?

昨年の春くらいからすでにやっていましたね。2019年の8月に行ったチャリティイベント(「Children of the New Age ~新時代の子供達へ~」)で共演者と今後の活動について話していた時に、葉月(lynch.)が曲を書かせて欲しいって言ってきて。そうしたら、明希(SID)も打ち上げで「俺も隆一さんに曲書きたいんです」って。えー、じゃあせっかくだから栄喜も書いてよ、と。マオ(SID)には作詞で参加してもらって、そこに何度か歌わせてもらっていたGEORGEさん(LADIESROOM)の楽曲や、YOU(足立祐二)さん、INORAN、葉山(拓亮)くん、福ちゃん(福田真一朗)、雄矢(菰口雄矢)に書いてもらった楽曲をプラスして、提供曲だけのアルバムにしようと。

-今作の聴きどころとしては、やはり昨年6月に急逝された足立祐二さんの楽曲「Moon Walker」だと思うのですが。YOUさんとの最初の出会いって、いつ頃だったんですか?

80年代か90年代に四鬼夜行っていう中野公会堂でやったイベントを観に行ったんですよ。そこにDEAD ENDが出ていて、それが生で初めて見たYOUさんでした。DEAD ENDが解散してしまった後、YOUさんが今音楽活動をしていないという話を聞いて、すごく驚いて。足立祐二さんのギターって、あの滑らかなフレーズとか、チョーキング、ビブラート、どれを取っても唯一無二なんですよね。それで、自分のソロアルバムでゲストで弾いてもらいたくてお願いしたんです。『VANILLA』というアルバムだったんですけど、 OKしてくれて実際にスタジオに来てくださって。ずっと聴いていた大好きなバンドのギタリストですから、もう、かぶりつきで見ていましたね(笑)。

-やはりYOUさんのギターはすごかったですか?

それはもう。何がすごいって、ヘッドホンもしない、ドンカマも聞いていない、モニターから流れてくる音量も大きくしろとも小さくしろとも言わず、そのまま弾くんです。それなのに、リズムがジャストなんですよ。何を弾いてもリズムが必ず合っているので、カッティングを弾こうがアルペジオを弾こうが、全部ハマっちゃう。テイクも1回か2回だけで、ソロパートだけ3種類くらい弾いてくれて「どれか選んでくれたらいいよ」みたいな(笑)。

-リズムがまったくブレないってすごいですね。

もちろん、顕微鏡レベルでグリッドデータを見ていけば多少ズレているところもあるとは思うんです。あまり合いすぎても打ち込みの音みたいに迫力がなくなっちゃうし。それに、リズムだけではなくチョーキングから何から音程も良いんです。「こんなに早く終わっちゃって時間どうする?」くらいの感じでした(笑)。そうしたらYOUさんが、「いや〜、隆一の楽曲は難しいよ」って。嘘ですよね!?みたいな(笑)。

-その時をきっかけに、もうずっと?

そうですね。そこからツアーで弾いてもらったり、いろんなところでご一緒させていただいていました。もちろん、しばらくお会いしない時もあったりしましたけど。

-今回の楽曲提供というのは、どのタイミングで?

一昨年の年末くらいだったと思います。前から「YOUさんの楽曲を歌いたい」ってずっとご本人に言っていたんですよ。それで、今回のアルバムが決まったタイミングでお願いして。

-すごく神秘的な曲ですよね。歌詞は隆一さんが曲からイメージしたものですか?

というか、これはもう完全にYOUさんへ宛てて書いた詞です。“月を盗んだギタリスト”というイメージで。月って雲が隠したり、欠けたり満ちたり、いろんな形があるじゃないですか。このアルバム全体を通して“月”がいろいろな形で出てくるんですけど、その中でも“月を盗む”という表現が、僕の中でYOUさんがこの世の中からいなくなってしまった感覚にすごく近かったので。



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