清春が語る「配信ライブ」のあるべき姿

PR目的ではなく普段の感覚でライブがしたい

―配信ライブでよく言われる「無観客」についてはどう思います?

清春:生のライブはもちろん普段から自信があってやるんだけど、無観客は違うと最初思ってて。僕は無観客だとパフォーマンスする意味がないと思ってしまうんですよね。ライブって目の前で観てくれる人がいることで初めてライブになる。だから「無観客ライブ」はライブにはなり得ないという、自分の中ではっきりとした区分けがあります。そんな時、レディー・ガガがやった新型コロナウイルス感染症対策支援コンサート「One World: Together at Home」があった。あれを観て、いろんなアーティストが数分だけパフォーマンスしてつないでいくのはいいなとは思いました。

とはいえ、無観客ってことへの違和感はやっぱりずっとあって。コロナの自粛期間中に、2〜3時間のオンラインライブをいろんなひとが無料でやり始めたんですよ。その様子を見て今度は「無料」ということに疑問を感じました。実際は投げ銭出来るライブだったりして、それだと無料とは言わないよねと思ってしまったり。

―清春さんらしい(笑)。

清春:有料の場合でも金額に違和感あったんです。例えば、渋谷のライブハウスを会場で使うとして、車をどこかコインパーキングに停めるだけで4000円ぐらいかかるわけですよ。それよりも安い金額、それこそ500円とか1000円とかでライブしたらダメなんじゃないかと。PR目的でやるというよりは、普段の感覚でライブをしたかったんですよね。自分のファンだけに観てほしいし、永遠ではないものをやるべきだと思ったんです。

ライブって残らないから何度も行きたくなるし、その場で体験したい。でも今は直接会えない。先日の『THE TEST』の映像もアーカイヴは3日間だけは観れるんですが、それ以降は消えてしまう。で、いろいろ考えて、断片だけ残るようにしようと。それでオンラインのインフラを使って、音だけは全編ダウンロードできるようにしようというのをまず思いついたんですよね。

―観ていない方のために、あらためて『THE TEST』について簡単に説明すると、配信当日は清春さんが借りたライブハウスで約2時間のライブ演奏を敢行。生配信終了後、3日間はアーカイブとして視聴が可能。そしてライブ音源が後日データでお客さんに送られてくるというパッケージでした。

清春:一人の表現者として提案してみたんです。2時間一発録りで普通のライブで歌うよりは、レコーディングに近い形でやれるかもしれないと。無観客ライブではない、レコーディングでもなく、スタジオライブでもなく、2時間程度の長尺のMVを作る気持ちもありながら、その中間をやっていこうと。あくまでも「無観客ライブ」という意識は一切排除しようとしました。今まで僕みたいなライブを中心にやってきた、現場で頑張ってきたミュージシャンにとって、コロナ禍の時代における実験的なテストだと思って。

でも自信はありました。今までたくさん映像も撮られてきたし、たくさんレコーディングもしてきたし、ライブも死ぬほどやってきた。だから本番で何かあった時の振る舞い方もわかってる。チケットは高額です。通常7000円で、Tシャツ付きで1万2500円。「え?」って思った人もいると思うんですけど、買ってくれたファン達は大満足だったんじゃないかなと。予想以上にたくさんのファン買ってくれたので、良かったのかなと思っています。

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