大手レコード会社の重役たちが明かす、Withコロナ時代のマーケティング戦略

物理的なやりとりが困難となっている今、アーティストやレーベルはオンラインの世界で存在感を示す方法を模索している。(Photo by Eric Risberg/AP/Shutterstock)



RCAレコーズの取り組み

ソニー傘下のRCAレコーズのマーケティング部署を統括するキャロリン・ウィリアムズ曰く、Intagram Liveは同社にとって最も重要なデジタルマーケティングツールとなっている。しかし、膨大な量のコンテンツが出回るなかでファンにアピールするため、各レーベルは杓子定規でないユニークなアイデアを出さねばならない。「既に多くの人が、Instagram Liveでのパフォーマンス配信に飽き始めています」。彼女はそう話す。「コンテンツが氾濫するなかで、どういったものが注目を集めるのかを見極める必要があります」

パンデミック初期、RCAはストリーミング需要が期待されたほど伸びなかったことに対し、多くのマスメディアがその競合相手となっていることが理由だと悟った。「ニーズがむしろ低下していることを知った時は、『一体どういうことなの?』といった感じでした。やがて私たちがNetflixやAppleと競合していることを知り、最もニーズが高まっているのがニュースだということに気がつきました。ニュース番組と競合するなど、それまでは考えもしなかったことです」。彼女はそう話す。

ウィリアムズによると、Global Citizenの「Together At Home」コンサートや、iHeart RadioのLiving Room Concert for Americaといったメジャーな音楽番組にアーティストを出演させることが最も効果的だという。アリシア・キーズ等がパフォーマンスを披露した曲は、パンデミックという事態のなかで新たな意味を獲得したことで、結果的に人気が高まっている。

「iHeart Radioのイベント出演は私たちが最初に着手したもののひとつで、アリシア・キーズが披露したアコースティックバージョンの『アンダードッグ』は思いがけない反響を呼びました。リリースから数カ月が経過していましたが、当時の人々の心境とマッチしたのでしょう」。彼女はそう話す。「その時私たちは、世間の感情に寄り添ったコンテンツを提供しつつ、同時にメッセージも発信するという戦略を考えつきました。必勝法があるわけではなく、今も手探りをしている状況ではありますが、私たちはNetflixやHBO等のコンテンツと競合できるエリアを模索しています」

アーティストたちもまた、パンデミック下でのマーケティングへの順応を迫られており、苦手であってもソーシャルメディアでの露出が不可欠となっている。ワーナー・レコーズ所属のシンガーソングライター、ジョシュア・スピアーズは、時間をかけて準備してきたデビューEPの『Human Now』を、パンデミック真っ只中にリリースした。同社が抱える新人アーティストの1人である彼は、ニューヨークとロサンゼルスでリリースイベントを控えており、彼のエージェントはツアーの開催も視野に入れていたが、当面の間そういった伝統的なマーケティング手法はすべて使えなくなってしまった。

彼は現在、そういった状況下でファンにアピールする術を模索している。彼はInstagram Liveでバーチャルブッククラブを開催し始め、レーベルと共同で自身の手描きのアートを用いたリリックビデオを制作したという。「今はミュージシャンの仕事内容が変わってしまってる」。スピアーズはそう話す。「豊富なツアー経験とか、そういうのが何の役にも立たないんだ」

誰もがそうであるように、彼も今後はよりデジタルな露出を増やそうとしている。しかし競争率が高まる中で、彼はコンテンツの中身と提示の仕方を慎重に吟味している。「練られたものであれ思いつきであれ、手法が従来とは違うだけで、ファンにアピールするという目的は同じだ。僕はできる限り、それを誠実な方法でやりたいと思ってる」。スピアーズはそう話す。「取って付けたようなYouTubeブロガーやTikTokerに転身するつもりはないよ。クリエイティブなやり方でオーディエンスにアピールすることが求められているなかで、ただクリック数を稼ごうとしている下心丸出しのクリエイターなんて、ユーザーたちから簡単に見破られてしまうだろうからね」

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Translated by Masaaki Yoshida

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