史上最強のA&R近藤雅信が語る岡村靖幸「色々な方に彼の論文を書いてもらいたい」



田家:岡村さんは岡村ちゃんって呼ばれたりするので、思春期っていうイメージもあるのかもしれませんけど、これは少年性っていう別のテーマがあるのかなって思ったんですけど。

近藤:これはTBSの『王様のブランチ』からオファーを受けて生まれた曲ですね。土曜日の朝を爽やかに! っていうことで本人が書いたんですけど。作品の出来も満足しているんですけど、「少年サタデー」っていうタイトルがよく思いついたなって。

田家:『ユリイカ』の坂本さんとの対談で「諦め力」っていう言葉を使っていたんですよ。歳をとっていくこととか、何かをあきらめていくことを力にするんだっていうことで、この曲の中の少年性との距離感が面白かったですね。今じゃないと書けない曲だなって思いました。

近藤:なるほど、そうかもしれません。今は本人の気持ちとか、コンディションがいいんじゃないんでしょうかね。コンディション良くないとこういう曲書けないですし。悲しい時には書けない。



田家:続いて7曲目でリード曲「マクガフィン」。これはフィーチャリングとかではなく、“岡村靖幸さらにライムスター”という名義です。作詞が宇多丸さんとMummy-Dさんで、ターンテーブルがDJ JINさん。この"さらに"っていうのは本人のアイディアですか?

近藤:「さらに」は僕のアイデアですね。

田家:このセンスが似ているんでしょうね(笑)。「さらに」にしたかった?

近藤:うーん、色々考えたんですよ。岡村靖幸とにかくライムスターとか、岡村靖幸とかライムスター、岡村靖幸なによりライムスターとか色々考えて、その中で一番ピンと来たのが「さらに」だったんですよ。で、「さらに」がいいなと思って本人たちにもプレゼンして両者とも喜んでくれたのでこれになったという。

田家:近藤さんとしても面白がって?

近藤:面白い方がいいし、その方がお客さんも楽しんでくれるのかなって思いますし。最近、スチャダラパーがライムスターとコラボしていて、名前が「スチャダラバーからのライムスター」なんですね。これから平仮名3文字が流行ればいいなと思ってますけど(笑)。

田家:なるほどね。言葉も独特で岡村語というものがあるんですけど、音楽も一筋縄ではいかなくて、ファンク、ブラック・ミュージックでありながら、日本の音楽やクラシック、ハードロックとかパンクも入っていて。「なごり雪」もカバーしたことありましたよね。雑多なものが全部リズムトラックに入っているような。この怪物感を特に感じました。『ユリイカ』では過去のインタビューにも触れていて、90年くらいのエピックレコードの藤井さんっていうプロモーターが担当していたときに、インタビューの前に媒体の人に「音楽の話は絶対に訊かないでください」って言っていたと(笑)。

近藤:僕もたまに言うかも(笑)。インタビュアーの人も困りますよね(笑)。

田家:中途半端な知識で音楽の話をするよりも、しないでくれって言われた方が話の進め方が面白い時はありますよね。

近藤:その辺のことについては4月20日発売の「ミュージック・マガジン」で本人が答えていますのでぜひお読みください(笑)。

Rolling Stone Japan 編集部

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