本当は無実かもしれない5人の凶悪殺人犯

5つの事件は当然有罪になると見られていた――が、真相は違うと支援者たちは言う(Photo by ZUMA)



犯人は被害者から気絶寸前まで首を絞められたこともあったと証言

・ジョディ・エイリアス


ジョディ・エイリアスは恋人を殺害したとして有罪判決を受けたが、本人は正当防衛だったと主張している(Photo by Tom Tingle/AP)

近年、アメリカでもっとも嫌われた殺人被疑者としてスコット・ピーターソンと肩を並べる者がいるとすれば、ジョディ・エイリアスだろう。エイリアスは2008年にアリゾナ州メサで、つかず離れずの交際をしていたトラヴィス・アレクサンダーさんの謀殺容疑で起訴された。彼女は2013年まで証言台に立つことはなかったが、それまでメディアは彼女が有罪だと信じて疑わなかった。陪審も同様で、エイリアスは2015年、仮釈放なしの終身刑を言い渡された。

ピーターソンと違い、エイリアスは無実を主張しなかった。少なくとも、今はそうだ――彼女は裁判で、アレクサンダーさんを銃で撃ったのは正当防衛だったと証言した。だが、アレクサンダーさんが殺害されたとされる2008年6月4日の出来事についての彼女の話は、すでに2度変わっている。彼女は当初アリゾナにはいなかったと話していたが、犯行現場にいた証拠が出ると、現場にいたことは認めたが、殺したのは2人の強盗だと言った。それから2年後、今度は正当防衛だったと主張を変えた。

2013年、エイリアスの証言は18日間にわたって行われた。この時彼女は2人の性生活を赤裸々に語った。熱心なモルモン教徒だったアレクサンダーさんは、アナルセックスを好んでいた。教会の教義にそれほど違反せずに済むからだ。またエイリアスは、アレクサンダーさんが精神的にも身体的にも暴力的になることがあったと主張し、気絶寸前まで首を絞められたこともあったと言った。そのため(エイリアスの主張によれば)アレクサンダーさんのカメラを落として暴力を振るわれたとき、彼女は命の危険を感じた。検察側は、彼女が撃った銃は祖父母から盗んだものだと主張したが、エイリアスは銃はアレクサンダーさんのもので、撃ったのも事故だったと言った。その後のことは、弁護側の専門家がいうところの外傷後健忘のせいで何も覚えていないが、銃を捨てたことは認めた。銃はいまだ発見されていない。

それに銃は凶器ではなかった――弾はアレクサンダーさんの眉毛をかすめ、最終的に胸に命中したが、それが死因ではなかった。死に至らしめたのはナイフだった――アレクサンダーさんは胸と背中を27回も刺されていたが、最終的な死因は首からの出血死だった。顎の下を、端から端まで切り裂かれていた。エイリアスはアレクサンダーさんを刺したことも、喉を切り裂いたことも覚えていないと証言したが、バスルームの床にナイフが落ちた音は聞いたと証言した。検察側も主張を変え、先に銃で撃った(エイリアスの説明とも一致する)のではなく、最後にとどめの一撃として撃ったとし、エイリアスの残虐性を示す証拠だと言った。検察のこの仮説は、5年前に行われていた検視報告書と矛盾する。弾丸がアレクサンダーさんの脳を貫通し、それが死因だという検視官の証言もまた然りだ。

検察の時間軸は、犯行現場の証拠と、洗濯機の中から発見されたアレクサンダーさんのカメラから復元した撮影記録時刻に基づいていた。エイリアスはナイフで刺す「数秒前」、シャワーを浴びているアレクサンダーさんの写真をエイリアスが撮影した、と検察は主張し、エイリアスがアレクサンダーさんの死体を引きずった時にカメラが床に落ちて、「偶然」写真が数枚撮影されたと言った。だが、「偶然」撮影された写真は暗くて画像も乱れており、アレクサンダーさんやエイリアスだとはっきり特定するものは写っていない。彼女の支援者は、手動で追加された撮影時刻の信憑性に疑問を呈している。

検察側は、アレクサンダーさんが殺されたのは2008年6月4日だと主張した――だが腐敗状態から、検死解剖では死亡日時が特定できなかった。検視官もこれについては証言していない。エイリアスの支援者は、弁護側がアレクサンダーさんの死亡日を示す証拠が薄い点を追及せず、弁護を怠ったと考えている。よりによってその日は、その週で唯一エイリアスのアリバイがなかった日だった。さらに、検察が主張するようにアレクサンダーさんの遺体を引きずるほどの力はエイリアスにはなく、ルームメイトが1時間後に帰宅する前に洗濯機を2度も回すような時間はなかった、と支援者は言っている。

それから5日以上、アレクサンダーさんのルームメイトは誰も「鼻をつくような」腐敗臭が家じゅうに充満しても気づかなかったことになる。ルームメイトの2人は刑事に対し、彼が死んだとされる日の後も被害者を見かけたと語った。都合のいいことに、2人は証人に召喚されなかった。

エイリアスの支援者らは、メサ警察が捜査で手を抜いて証拠を黙殺し、弁護士も死刑判決を免れることに一心不乱で、有罪評決のために努力しなかった、と固く信じている。エイリアスは宣誓証言でアレクサンダーさんの死の責任を認めてしまっているため、せいぜい望めるとしても減刑どまりだろう。だが支援者の中には、そもそも刑務所行きになったことがおかしい、と信じる者もいる。エイリアスがアレクサンダーさんを撃ったのは正当防衛かもしれないが、証拠を徹底して再検証すれば、彼女が本当に殺したのかどうか当然疑問が起きるはずだ、と彼らは言う。エイリアスの行動がこれまで予測不能だったことを踏まえれば、彼女が三度証言を変えることも十分あり得る。

Translated by Akiko Kato

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