KIRINJIが語る、新しい音楽への好奇心と「断絶の時代」に紡ぐ言葉

左から千ヶ崎学、堀込高樹(Photo by Takanori Kuroda)



今は、毒気のある言葉をわざわざ歌にするのも違う

─例えば前作に収録された「時間がない」では、当時49歳だった高樹さんの「残りの人生」について歌っていました。今作でもこの「killer tune kills me」をはじめ、「休日の過ごし方」や「隣で寝てる人」など高樹さんの年齢だからこその「リアル」があります。実際、今年50歳を迎えたわけですが、何か思うところはありますか?

堀込:「休日の過ごし方」は、自分がもし結婚もしないで一人でミュージシャンとして生活していたらどんな感じかな?ということを思い浮かべながら書いた曲です。独身の友人は結構多いのですが、彼らはみんなアイドル好きになっちゃって(笑)、イベントへ行ったり、小さなライブハウスに通い詰めたりしているんですけど、でも彼らはちょっと前まで、休みの日となると映画へ行ったり美術館へ行ったり、そのあとオープンしたばかりの話題のカフェへ行って、休憩がてらお茶して……みたいな過ごし方をしていた(笑)。最近、日曜日にカフェに行くと、一人で来てお茶を飲んでいる人が増えましたよね。

─“約束はない 予定はあっても 映画と本屋とカフェ”というライン、独身中年としては刺さりまくりました(笑)。そういえば去年だったか、日刊ゲンダイで中年男性が一人でフジロックへ行く現象について取り上げられていましたよね。記事の内容には賛否両論ありましたが。

堀込:へえ、そうなんですね。僕も去年テントエリアに泊まっていたら、隣が一人用テントで。静かに過ごしていらっしゃいました。俺も独身だったらこういうことしたいなあと思いましたけど。

─千ヶ崎さんは、この辺りの高樹さんの歌詞をどう思いましたか?

千ヶ崎:“自由の刑に処せられたプリズナー”は強烈ですよね。

堀込:(笑)。僕も結婚する前とか、そんな感じでした。会社勤めもしていて、彼女もいない時期だと休みの日にキリンジの曲を作って、でもそれだけだと息が詰まるから気分転換に外へ出かけて。

千ヶ崎:「時間が有り余る感覚」ってもうなくなっちゃいましたよね。そういえば学生の頃とか、美術館の横の噴水近くで昼寝とかしてたな。

堀込:ちょうど僕はその頃、川崎に住んでいたんですよ。二子玉川を過ぎて高津とかその辺りだったから、意味なく鶴見や浜川崎とか行っていました。東芝の工場に勤めてる社員だけが使う鶴見線に乗って。

千ヶ崎:あと、「隣で寝てる人」は、聴けば聴くほど面白い曲(笑)。ちょっと「silver girl」の続編のようにも感じました。この辺りの描き方が、歳を取るにつれて高樹さんの中でどう変わっていくのかは楽しみですよね。興味が尽きない(笑)。


Photo by Takanori Kuroda

─歌詞が変わってきたのは、お子さんが大きくなったことも関係していますか?

堀込:音楽の趣味は日々変わるし、もちろん息子の影響も受けるけど、歌詞に関しては「変わった」という自覚があまりないです。ただ、いっときよりも毒気がなくなったとは言われますよね。でも、世の中に毒気のある言葉が溢れているから、わざわざここでそういうことを歌にするのもなんか違うよな、という気持ちはずっと続いていて。

千ヶ崎:でも、毒気を吐きたい性質というのは高樹さんの中に、おそらく今もあるわけじゃないですか。

堀込:(笑)。

千ヶ崎:表層には現れていなくても、その毒は歌詞の中から時々感じますし、むしろそこが僕はすごく好きなんですよね。

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