KIRINJIのベスト盤をリピートしたら、やりすぎなほどセンチメンタル・ジャーニーだった

石山蓮華

趣味は電線、配線の写真を撮ること。先日は川谷絵音の舞台「独特な人」に出演した女優・石山蓮華による連載がスタート。徒然と思考を綴ります。

私は前日の夜にふと思いつき、早起きして大阪行きの新幹線を予約した。

明日は劇団イキウメの舞台「獣の柱」の千秋楽が大阪の劇場で上演される。これは情報が出たときからずっと「観るぞ、観るぞ」と思っていたのに、東京公演のあいだでは見逃してしまった。朝の8時に家を出れば当日券の列にも間に合うから行っちゃおう。ついでに京都でやるイベントにも行っちゃおう。私はいそいそと支度をし、日傘をさして東京駅へ向かった。

おにぎり2つを片手に乗り込んだ新幹線の座席から「大阪・吹田で警察官が刺され、男は拳銃を持って逃走中……」というニュースが横長の電光掲示板に流れていくのを見て「拳銃 持ってる人 会った時」と検索したり、いま座っているシートは盾になるだろうかと考えながら座席とクッションの隙間に手を差し込んでみたりした。

新大阪の駅に降りたとき、空は明るかったけれど雨が降っていた。もしも「大阪にきたよ」と母にメッセージを送ったら「とっとと帰ってきなさい」と言われるような気がしたので黙っておくことにした。

無事に演劇を観終えてから次の用事まで時間があったので、梅田駅の地下街にある喫茶店でハンバーグドリアとサラダとケーキのセットを頼んだ。

デザートのザッハトルテを食べながら、いま後ろから銃声が聞こえてきたらどこへ逃げるべきかを考えた。知らない場所ではどうやって逃げれば安全なのか、どこにどんなものがあるのかも全くわからないし、検索結果に書いてあった「ジグザグに走って逃げる」ことと「息を潜めておく」ことではどちらが正解なのか検討もつかない。左隣の席ではむっちりした中学生2年生くらいの男子がだらしなくソファにもたれかかって一心不乱にゲームをやっていた。席に松葉杖が立てかけられていた。もしもの時にこの人はどうやって逃げるんだろう。

私は新幹線の速さで大阪にきて弾丸のスピードで死んでしまうかもしれない、ここで遺書を書くべきだろうかとぼんやりしながら怖がっていた。

不安にかられながら食べても、ザッハトルテはめちゃくちゃ甘かった。

店を出てから、駅の壁に貼り付けられたステンレスの板で自分の顔をのぞいたら、唇にチョコレートがべっとり付いていて人食いのようだった。

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