スティーヴ・ジャンセンが語るジャパン時代、「静かに音楽を作ってきた」40年の歩み

2019年9月27日、エグジット・ノースの一員としてビルボードライブ東京に出演したスティーヴ・ジャンセン(Photo by Masanori Naruse)



ミュージシャンとしての美意識と哲学

─一人で自由にやるのとは違って、バンドは大変じゃないですか?

スティーヴ:確かに何をするにも時間はかかるよね。他のメンバーは他に仕事を持っているし、今回、新しいプロジェクトということもあって、今まで自分たちがやっていたことから、こちらに注力しなくちゃいけない状況で、切り替えが難しいところはあった。フルタイムで音楽をやってるのは、僕とチャーリーだけなんだ。トーマスとウルフはフルタイムのミュージシャンじゃないこともあって、まず時間を見つけるのが大変だった。でも一緒にやっているうちにときめくことがいっぱいあって、それがバンドを続けていく力になって、結果的にアルバムが完成した。当然、ソロでやるのとはすごく違うけど、第一、僕は自分のやり方がベストだと思っているわけじゃないしね。他にもっといいやり方があり得ると思っているから、時には他の人の力を借りて、特定のやり方にこだわらずに自由にやっている。そんなわけで、バンドだからといって大変なことは特になかったよ。

─鷹揚なあなたらしいですね。あなたとかつて一緒に仕事をした人は、プロデューサーから共演者に至るまで、「スティーヴの人間性は本当に素晴らしい」と口を揃えるんですが、その一方で、アーティストというものは、どこかに普通ではない部分や、少しいびつな部分を持っていることも多いですよね。あなたには、そういう部分はありますか?

スティーヴ:あはは。欠けている部分、ということに関していえば、誰にだってそういうところはあるんじゃないかな。完璧な人間なんていないし、僕にもイディオシンクラシー(その人特有の癖)のようなものはある。ただ、仕事をする上ではその欠点が逆にうまいこと機能する場合もあるよね。機能させようと努力もするし。

まあ、僕はどちらかというと人に合わせるタイプなんだよね。人と衝突するのは嫌だから、なるべくそうならないようにしている。ネガティブな態度がいい結果をもたらすことはないと思うから。音楽ではダークなものを沢山作っているから、自分自身までダークになる必要は全然ないんだ(笑)。

─でも、ものを作る時って「どうしてもこうしたいんだ」ってことが必ず出て来るものでしょう。衝突が不可避な場合もあると思うんですけど。

スティーヴ:うん、あるよ。でも、妥協することによって良い結果につながることだってある。

─う~ん、それは大人の意見ですね……。

スティーヴ:ハハハ。そりゃ大人だよ。60歳だから(笑)。ただ、そうしても良いと思う人たちと一緒にやるというのが条件だけどね。この人と仕事をするのは難しいだろうなと思う人とは組まない。今のところ、自分とアティテュードが似ている人と組めているというのは、恵まれていると思うよ。創作する上で、自分も相手も「らしく」いられるようにということは大事にしているんだ。そうすると大抵はうまくいくものだよ。

エゴが先立つと、うまくいかなくなることが多いけど、そういう人は押しまくるばかりで、自分が引くということを知らない。不安だったり、余裕がなかったりするとそうなってしまうんだろう。幸い、僕の周りにいる人はそういうエゴとは無縁の人たちばかりで、自分にものすごく自信があるというわけでもなく、ただ静かに音楽を作っている(笑)。それだけで幸せを感じるタイプなんだ。


Photo by Toshiya Oguma

─納得です。あなたの美意識や、ものの考え方を形成する上で、一番大きかったのは何ですか?

スティーヴ:深い質問だな……美意識というものは重層的なもので、様々な要素が重なり合って出来るものだからね。自分が実際に経験したことから多くの学びを得て、その中から人との付き合い方とか、物事の見極め方を身につけていったという感じかな。それから、父親になって子供を育てた経験も大きいよ。子供の目から物事を見てみる、あるいは子供を通して自分を見ることによって、僕自身のものの見方が変わったりもした。そうやって長いプロセスにわたって経験してきたことが、今の自分を形作っているんだと思う。

それから、年齢を重ねると、これまで様々なチャンスに恵まれてきた自分の幸運さに感謝する気持ちがますます強くなるんだ。こうして音楽を続けられていること、それをみんなに届けられていることが、とにかくありがたい……って、これ、質問に答えたことになるのかな……(笑)。

─大丈夫、答えてます(笑)。

スティーヴ:それから、一つ付け加えるとすれば、僕が特定の宗教を信じていないということも関係しているかもしれない。ここに生きていること、それだけが全てであり、真実であるという考え方なのでね。

─現実に生きるということですね。では、もっと具体的な訊き方をしましょうか。音楽以外の、他の芸術形態ではどうでしょう? 例えば文学やアート、映画で、今に至るような影響を受けたものは?

スティーヴ:映画は好きだね(と言いつつ、どの作品とは言えないらしい)。ストーリーはもちろん、脚本、撮影の仕方でも作品の質が変わるし、音楽の魅力もある。伝えられることが多い分、興味深いメディアだ。駄作も多いけど、素晴らしい作品も多くある。もちろん、本を読むのも好きで、よく読書しているよ(これも特に作品名は挙がらず)。

Translated by Kazumi Someya

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE