スティーヴ・ジャンセンが語るジャパン時代、「静かに音楽を作ってきた」40年の歩み

ミュージシャン人生のハイライト、これからの人生

─余計なお世話かもしれませんが、「ジャパン、大好きでした!」って言われると微妙な心持ちになりませんか? あなたは今も現役なのだし、「好きでした」って過去形だし……。

スティーヴ:うんうん(笑)。でも、そういうものだよね。ジャパンは僕の歴史ではあるけど、今は僕から離れて、その人のものになっているんだよね。確かに自分がやっていたことではあるんだけど、どこか他人事というか、不思議な気持ちになるよ。でも、誰でも心の中に、好きだったバンドが占める特別な場所というのがあるよね。僕にもある。例えば、ある特定のタイプの音楽を初めて知ったきっかけになったバンドって、やっぱり特別だよね。

ただ、僕にとってジャパンはそういう対象ではないんだ。だからたまに僕がジャパンのことを振り返って話した内容について「なんで私にとって大事なバンドなのに、そんなネガティブなことを言うの?」なんて言われると……(苦笑)。僕にとってジャパンは、クリエイティビティのアウトプットの一つ、という位置づけでしかないからさ。

─「今の作品も聴いてね」って言いたい気持ちもある?

スティーヴ:昔のファンに対して? まあ、何をやってもジャパンと比べられるのはわかっているし……でも、若いファンで80年代の音楽が好き、という人たちは、あの当時のジャパンの音楽だけを求めていて、そこから先−−例えば今、僕がやっていることにはなかなか繋がっていかない。どちらにしても難しいところだよ(笑)。

─……ずいぶん俯瞰して見てるんですね。

スティーヴ:それが現実だからね。フフッ。

─実際、若いファンの存在を感じていますか?

スティーヴ:うん。直接触れ合ったことはないけど、ネットを通じて、若い人たちがジャパンのどんなところに反応しているかとが、客層みたいなことがわかるからね。それを見る限りでは、新しいものに対してではなくジャパンに反応してる若い人達の方が多い。僕に関しては「あ、この人、まだ生きてたの?」みたいな感じさ(笑)。

─今までのミュージシャン人生を振り返って、最大の喜びを感じた時というのはいつですか?

スティーヴ:ハイライトといえば82年かな。本当にいい年だった。ジャパンでツアーをして、ユキヒロ(高橋幸宏)ともツアーして、とにかく楽しかった。いろんなことをする機会に恵まれて充実していたね。ジャパンは終わりに近かったけど、不思議と辛くはなかった。悪い思い出よりは良い思い出の方が断然多いんだ。



─これからしばらくはエグジット・ノースとして活動を続けていくと思うのですが、他に一緒にやってみたい人はいますか? 進行中のプロジェクトなどはあるでしょうか。

スティーヴ:ないよ。今はエグジット・ノースに集中している。旧知の人たちとは「何かやりたいね」というような話は常にしているけど、具体的な話になっているものはない。

─デヴィッド(・シルヴィアン)にまた一緒にやろうと言われたらやります?

スティーヴ:彼はもう引退したんだ。もう作品を作ることはないんじゃないかな。Twitterでちょっとそんなことをつぶやいていたよ。改めて発表したりすることはないと思うけどね。

─今はエグジット・ノースに注力ですね。出来るだけ長く続けていくつもり?

スティーヴ:特に目標も設けてはいないよ。これまでレコードを1〜2枚作って終わり、というプロジェクトをたくさんやってきたから、敢えて長期的なプランというのは立てないことにしているし、どうしても状況は変わっていくものだからね。でも今はこれが一番楽しいし、一緒にやっていて心地よいと思うから可能な限り続けて行きたいと思っているよ。


Photo by Masanori Naruse

Translated by Kazumi Someya

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