殺人鬼チャールズ・マンソンの歪んだビートルズ愛「この音楽は無秩序な力を引き起こす」

チャールズ・マンソン(左)は信者たちに、ビートルズのホワイト・アルバムには潜在的なメッセージがあると信じ込ませた。(Photo by Getty Images, Rolling Stone)



「ヘルター・スケルター」作曲の本来の意味

「ヘルター・スケルター」はもともとピート・タウンゼンへの挑戦状として書かれた曲だ。ザ・フーのギタリストがメロディメイカー誌とのインタビューで、「恋のマジック・アイ」を史上もっともワイルドな曲だと評したのがきっかけだった。「僕の闘志に火をつけて腰をあげるには、あの一言で十分だった」と、のちにマッカートニーは語っている。「それで本腰をいれて、史上もっともやかましいヴォーカル、もっとも騒々しいドラムにしようと思って書いたのが“ヘルター・スケルター”だ」。彼はまたこうも語っている。「おふざけで書いた曲だよ……僕はノイズが好きだからね」。裁判でのマンソンの発言によれば、彼はヘルター・スケルターを一般的な意味でのカオスと解釈した。彼にとってもっとも重要なテーマだったことは、マンソン・ファミリーの隠れ家のひとつスパーン牧場のドアに“ヘルター・スケルター”と書かれていたことからも明らかだ。だが、ファミリーの一員だったポストン氏によれば、マンソンは『ヨハネの黙示録』の地獄の穴からファミリーが現れたことを指していると考えたようだ。

「(“ヘルター・スケルター”が)意味するのは、文字通り混乱だ」と、マンソンは裁判で述べた。「誰かと戦争することじゃない。他の誰かを殺すことじゃない……ヘルター・スケルターは混乱なんだ。混乱があっというまに自分たちを取り囲む……」

「体制が急激に世の中をぶち壊しているから、音楽が若者に体制に立ち向かえと命じているなんて、まるで陰謀じゃないか?」と彼は続けた。「音楽は日々語りかける。だけど、聴く側がバカで、トンマで、世間知らずだから、音楽など聴きもしない……俺が企てた陰謀じゃないぜ。俺の音楽でもない。俺は音楽が語ることに耳を傾ける。音楽が『立ち上がれ』とか『殺せ』と言ってるんだ。なぜ俺のせいにする? 俺が曲を書いたわけじゃないのに」

だが、作り手には曲の意味は事理明白だった。「僕はヘルター・スケルター(遊園地の滑り台のこと)を、頂点からどん底へ落ちる象徴として使ったんだ――ローマ帝国の浮き沈みをね」と、かつてマッカートニーはこう言った。「物事の終焉、没落。なかなか洒落たタイトルだと思われてもいいはずだったのに、マンソンがあの曲を旗印に掲げてしまったものだから、あれ以来あらゆる類の不吉な前兆、という意味になってしまった」

お次は「ピッギーズ」。フォークとナイフで外食する上流階級の人間を描いた、ハリソンによる遊び心あふれる1曲だ。彼がこの曲を最初に書いたのは1966年。ホワイト・アルバムのレコーディング中に、レノンが「奴らに必要なのは最高級のおしおきだ」という歌詞を加えて完成した。だが、マンソンにとっては違う意味を持っていた。「マンソンはこの歌詞を、黒人が豚、つまり体制に最高級のおしおきをする、と解釈したんです」とジャコブソン氏はバグリオシ氏に語った。スーザン・アトキンスはのちに、シセロ・ドライブの家のドアにシャロン・テートの血で“pig”と書いた。ファミリーはラビアンカ邸の壁にも”豚に死を”という血文字を残し、フォークとナイフで一家を殺害した。

Translated by Akiko Kato

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