殺人鬼チャールズ・マンソンの歪んだビートルズ愛「この音楽は無秩序な力を引き起こす」

チャールズ・マンソン(左)は信者たちに、ビートルズのホワイト・アルバムには潜在的なメッセージがあると信じ込ませた。(Photo by Getty Images, Rolling Stone)



マンソンが受け取ったレノンのメッセージ

「マンソンの事件はすべて、豚についてのジョージの曲と、イギリスの遊園地についてのポールの曲から生まれたものだ」とレノンはかつてこう言った。「とくに何の関連もないし、少なくとも俺とは無関係だ」。だが実際には、マンソンはホワイト・アルバムに収録されているレノン作曲の2つの「レボリューション」にも独自の解釈を加えている。

「レボリューション1」は、グルーヴの効いたロックな1曲。たしかに、パリの学生運動やテト攻勢、中国の毛沢東共産主義の世界拡大など、政治革命に関するメッセージもいくらか織り込まれている――が、マンソンの耳には届かなかった。最初のコーラスが始まるや、レノンはこう歌い出す。「破壊について語るとき/俺をのけ者にしても、仲間にしてもいいんだぜ……わかってるか」と。

「あえて両方(“のけ者”と“仲間”)入れたんだ。自分でもはっきりしなかったからね」とレノンは言った。「殺されるのはゴメンだからな」。マンソンにとっては、それまでどっちつかずだったビートルズが、今はっきり暴力革命にGOサインを出したことを意味していた。マンソンにとって「みんな計画を知りたがってるぜ」という歌詞は、自分がメッセンジャーになり得ることを彼らに伝えなくては、というメッセージだった(彼はそのあとの対句を聞き逃したようだ。「だが、もし悪意に満ちた連中のために金が欲しいっていうなら/俺が言えることはただひとつ、ブラザーちょいと待ちなよ」)

とはいえ、マンソンがもっとも感銘を受けた「レボリューション」は「レボリューション9」だった。レノンが手がけた8分強の実験的音楽。20ものサウンドエフェクトを駆使して作った、アヴァンギャルドな音楽の旅。シベリウスの交響曲第7番や、「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」のオーケストラの多重録音パートもサンプリングされている。レノンはこの曲を当時付き合っていたオノ・ヨーコと共作し、ハリソンが自分のラッキーナンバー“9”をタイトルに加えた。「“レボリューション9”は、もし何か起きるとすればきっとこうなるだろうと僕が実際に考えた、無意識の未来予想図だ。革命の下書きみたいなもんさ」とレノンは『ビートルズアンソロジー』の中で述べている。「ただただ抽象的。ミュージックコンクレートにループ、そして人々の叫び声」。ニューヨーク・タイムズ紙はこの曲を、2枚組アルバムの中でもとくに「曲とも呼べない駄作」で、「偶然の代物」だと評した。

マンソンにとってはこれぞアルバムの真骨頂だった。ジャコブソン氏によれば、彼はこう考えた。「これから起こることを、ビートルズなりに予告しているんだ。彼らなりの予言なんだ。『ヨハネの黙示録』9章を直接たとえているんだ」。マンソンはマシンガンの発射音の奥に、豚の鳴き声と「立ち上がれ」と言う男性の声を聞いたと言われている。バグリオシ氏も自著の中で、この曲を聴いて驚いたと書いている。「実際に自分でも聴いてみた後、もし本当にそうした闘争があったなら、こんな風に聴こえたかもしれないな、と思いました」 だが、マンソンにとっては自明の事実だった。

ホワイト・アルバムはマンソン・ファミリーの日常生活のBGMになった。曲に隠されていると思しきメッセージを読み解き、マンソンの残忍かつ怪しげなビジョンの地獄絵にどう当てはめられるかを考えた。ワトキンス氏が言うには、マンソンは「ピッギーズ」「ヘルター・スケルター」「レボリューション9」――とくに、「レボリューション9」のマシンガンのパート――に、何度も同じコードが繰り返されているのを聴き取った。どういうわけか、それがマンソンの心にヒットした。

「音楽は全員にメッセージを送っている」と、かつてマンソンは言った。「音楽からメッセージを受け取ったからといって、頭のイカれたふりをする必要などどこにある? 音楽が『虹の彼方に』と言うなら、虹の彼方にいくまでよ」

Translated by Akiko Kato

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