まったく知らない人のために解説する「ヒプマイ現象」

山田一郎、碧棺左馬刻、神宮寺寂雷、飴村乱数という各ディビジョンのリーダーが、かつて結成していたという伝説のグループ「The Dirty Dawg」(©︎EVIL LINE RECORDS)



MCバトルと音楽的なこだわり

まず、本作の肝であり、大きな魅力のひとつとなっているのが「MCバトル」。簡単に説明すると、ラッパー同士が1対1でビートに合わせてフリースタイル(即興)で言葉を紡ぎ、お互いのラップスキルを競い合うというヒップホップ特有の文化のことで、もしエミネムの主演映画『8 Mile』を観たことがある人なら、すぐにそのシーンを思い浮かべることができるはずだ。日本では97年から代々木公園で毎年行われていた恒例のヒップホップイベント「B BOY PARK」での開催などを通じて定着(MCバトルの初開催は99年)。近年はBSスカパー!のバラエティー番組『BAZOOKA!!!』発の人気企画『高校生RAP選手権』や、2015年より放送開始したTV番組『フリースタイルダンジョン』などの人気によって、広く一般にも知れ渡ることとなった。それらの番組におけるMCバトルをエンターテイメント化して見せる手法は、キャラクターによるラップバトルを軸とした『ヒプマイ』に何らかの刺激を与えたことは間違いないはずだし、そういったブームの下地があったからこそ、『ヒプマイ』は発表から2年足らずで人気コンテンツになることができたのだと思う。


©︎EVIL LINE RECORDS

ただ、単純にMCバトルの要素を取り入れたからといって、人気が出るというものではない。本作は音楽を中心に据えたコンテンツなので、当然ながら楽曲自体に魅力がないことには成立しないはずだ。『ヒプマイ』はその点においても、楽曲それぞれのテーマ性に合わせた多彩かつ豪華なクリエイターを起用することで、見事にリスナーの心を掴むものを提供し続けている。例えば、ヨコハマ・ディビジョンのリーダー・碧棺左馬刻のソロ曲「G anthem of Y-CITY」の歌詞を提供しているのは、実際に横浜を拠点に活動するラッパーのサイプレス上野。横浜とヒップホップを愛してきた彼がリリックを書くからこそ、同曲はより深い意味を持って響くし、ある種の特別な説得力が生まれている。



その他にも、前述の『フリースタイルダンジョン』の立役者でもあるZeebraやUZI、KEN THE 390、ベテラングループのラッパ我リヤ、日本有数のMCバトル大会「KING OF KINGS」で初の2連覇を成し遂げたGADOROなど、日本のヒップホップシーンで活躍するラッパーが多数参加。ALI-KICKやCHIVA(BUZZER BEATS)、Yuto.com™、理貴といった一流どころのトラックメイカーも腕を振るっており、サウンド面でも流行りのトラップから硬派なハードコア・ヒップホップ、ファンキーなオールドスクール調、伝統的なウェッサイスタイルまで、あらゆるタイプの楽曲が用意されている。加えて、山嵐によるミクスチャーロック~ラップメタルや三浦康嗣(□□□)による前衛ポップ路線など、ラップミュージックを軸にさまざまな広がりを見せており、いろいろと聴いていけば何かしら気に入る曲が見つかることだろう。なおかつそれらが各キャラクターやディビジョンの個性を表現するために、すべて意味と必然性をもって作られているところがポイント。だからこそ音を聴き込んだり楽曲のバックボーンを知るほどに、より深みにハマることになるのだ。





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