『ヒプノシスマイク』がコンテンツの王者になった理由 伊東健人+神尾晋一郎 インタビュー

写真左が観音坂独歩役の伊東健人、右が毒島メイソン理鶯役の神尾晋一郎(Photo by Masato Moriyama、Styling by Ayako Udagawa、Hair and Make-up by Narumi Tsukuba)

「キャラソン」と「ラップバトル」を融合させたコンセプトで人気を集め、CD作品『MAD TRIGGER CREW VS 麻天狼』がオリコン週間チャート1位を記録。声優/アニメキャラクター・アルバム史上初の4週連続トップ10入りを果たすなど、飛ぶ鳥を落とす勢いで躍進する『ヒプノシスマイク』。

※この記事は2019年3月25日発売の『Rolling Stone JAPAN vol.06』に掲載されたものです。

2018年にはファン投票で勝敗が決まるバトルシーズンが開幕し、シンジュクの麻天狼とヨコハマのMAD TRIGGER CREWがファイナルに進出。麻天狼が見事優勝を勝ち取っている。『ヒプノシスマイク』はなぜコンテンツの王者となったのか――。麻天狼の一員・観音坂独歩役の伊東健人氏と、MAD TRIGGER CREWの一員・毒島メイソン理鶯役の神尾晋一郎氏に、このプロジェクトの独自性と、シリーズのこれまでを聞いた。

キャラクターとしての「正解」を探す

ー『ヒプノシスマイク』は「ラップバトル」と「キャラソン」の要素が組み合わさった、非常に斬新なプロジェクトになっていますね。

神尾 オーディションの時点でもラップ審査があって、これはなかなかない経験でした。また、楽曲も実際にヒップホップのクリエイターの方々が手掛けてくださっていて、そういう意味でもかなり尖ったプロジェクトだと感じました。開始当初、他の現場で会う同業者の方々からも「面白いことをやってるね」と言ってもらえることが多かったのを覚えています。

伊東 やっぱり、「キャラクターがラップをする」と、本職のラッパーさんのラップとはまた違うものになりますよね。僕らはキャラクターの個性を踏まえてラップをするので、みんながストレートにやればいいというわけではないですし、一方でラップにはいろいろなスタイルがあることを学ぶ機会にもなっていて。その両方を表現できる新しさを感じました。

ーそもそもの物語設定や、言葉の力を最大化する「ヒプノシスマイク」の存在など、世界観やストーリーもかなり独特なものになっていると思います。

神尾 そうですね。女性が支配階級にいる世界で、ラップバトルが行われて――。

ーそれをメディアミックスプロジェクトとして展開するからこそ、架空の世界が「キャラクターにとってはリアル」になっているのが非常に面白いな、と。

神尾 僕もそう思います。通常ラッパーの方は、自分の人生をラップしますよね。仮に60点の生き方をしてきたなら、「俺はその60点のリアルを歌う」ということで。でも、アニメキャラって、100%世界観が完成された状態で世に出るものだと思うんです。

伊東 なので、僕らが意識しているのも「いかにキャラクターとしての正解を出せるか」ということで。たとえば、麻天狼の「The Champion」なら、Zeebraさんの仮歌の時点で既に100点の状態にあるものを、僕らが「キャラクターとしての100点」に持っていく作業をしているのかな、と思います。

神尾 クリエイターの皆さんも、可能な限りニュートラルな状態のデモを上げてくださって、僕らが演じる余白を残してくれているんですよ。

ー観音坂独歩と毒島メイソン理鶯については、どんな風にキャラを作っていったんですか?

伊東 独歩は一番普通の人間で、“個性がないところが個性”です。普段は会社員で、都内で暮らす社会人としてイメージしやすい人物なので、自分の記憶から繋がる部分を引っ張ってきて、他のキャラクターとの兼ね合いも考えて声を作りました。身長が低くて、拳でやりあっても弱いほうだと思うので、ある種の「弱さ」も意識しました。理鶯は真逆ですよね?

神尾 元軍人ですからね(笑)。僕が演じる理鶯の場合は、「ハーフで身長も高いなら、低い声が合うだろう」と思って、オーディションの時点で1オクターブ下でラップをしてみました。また、日常生活でイメージしやすい独歩とは違って、理鶯は――。

ー森の中でサバイバル生活をしているんですよね。ドラマトラックでは、基本的に感情を出さないことを意識して演じているように感じました。

神尾 そうですね。訥々とした、まさに軍人然とした話し方を意識しています。テンションが上がる瞬間も「料理するとき」「ヨコハマ・ディビジョンの3人で話すとき」「いい敵を見つけたとき」の3つに決めていて、それ以外は起伏が出ないようにしています。


Photo by Masato Moriyama

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