マイク・シノダ1万字インタビュー:チェスター・ベニントンの死と自身の現在地

シノダの友人でもあるデフトーンズのフロントマン、チノ・モレノは彼に共感する。2008年にバンドのベーシストだったチ・チェンが交通事故に遭い、5年間生死の境をさまよった果てにこの世を去った。ベニントンが逝去したことを知ったモレノは、当初はシノダに連絡することをためらっていたが、後にメールを送ったという。それがきっかけで2人は共にスタジオ入りし、『ポスト・トラウマティック』に収録された「リフト・オフ」を共にレコーディングした。

またその時、2人は両者が経験した喪失感について語り合ったという。「主に話し合ったのは、罪悪感を覚えることなく創作活動ができるようになるまでに、どれだけの時間が必要かということだった」モレノはそう話す。「彼が生み出してきた音楽のいちリスナーだからこそ、俺には彼の葛藤がよく理解できたんだ」



シノダが最後にベニントンと会ったのは、彼がこの世を去るわずか数日前のことだった。「あいつからワツキーっていう名前の少年を紹介されたんだ」ラッパーであり詩人でもあるその少年の才能に、ベニントンは惚れ込んでいたという。「あいつは彼のことをしょっちゅう話題にしてたから、俺にも紹介してくれよって言ったんだ。それからしばらくして、ワツキーは友達と2人で俺たちがいるスタジオにやってきた。彼らが帰った後も、チェスターと俺はしばらくスタジオに残ってた。できそこないの曲をいじってみたり、控えていたブリンク182とのジョイントツアーのことなんかを話したりしてた。どうってことのない、いつものムードだったよ」

その数日後、ベニントンはロンサンゼルスの自宅で自ら命を絶った。本誌の取材に応じた友人によると、彼はアルコールへの依存に苦しんでいたという。また同年上旬に行われたインタビューの場で、リンキン・パークのヒット曲「ヘヴィ」について尋ねられたベニントンは、うつ症状に悩まされていることを告白している。検死報告書によると、ベニントンの体からはアルコールが検知されている。「当日の彼がどれだけ飲んでいたかは分からないけど、彼のアルコール依存の深刻ぶりを考えれば、わずかな量がその引き金になってしまった可能性も否定はできない」ベニントンの友人であり、彼のサイドプロジェクトであるデッド・バイ・サンライズのメンバーであるライアン・シャックは本誌にそう語っている。「ほんのわずかなアルコールが、彼の自制心を奪ってしまったのかもしれない」

Translated by Masaaki Yoshida

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