マイク・シノダ1万字インタビュー:チェスター・ベニントンの死と自身の現在地

シノダは古いものから順に曲をアレンジしていった。友人たちがねぎらいの言葉をかけるボイスメッセージで終わる「プレイス・トゥ・スタート」、ベニントンのトリビュートコンサートのことを歌った「オーヴァー・アゲイン」、拭えない悲しみを描いた「ホールド・イット・トゥギャザー」、終わりのないトンネルのような精神的苦痛を綴った「ワールド・イズ・オン・ファイア」、そして希望の光を灯すような「キャント・ヒアー・ユー・ナウ」。抽象的な絵とは対照的に、楽曲には忘れたい出来事のリアルな描写も登場する。「ホールド・イット・トゥギャザー」では、6歳の少年の誕生日パーティーの場で誰かがベニントンの死について触れた時に、ダークで気まずいジョークを発してしまったというエピソードを明かしている(「来るべきじゃなかった」彼はそう歌う。「今帰るのは不自然だし、どうしようもない居心地の悪さを感じてる」)アルバムを作るにあたって、シノダはありのままの自分を描こうとしたという。

「すべてを曝け出したように感じてる」そう言って彼は顔をしかめた。「アルバムに収録されなかった曲もあるけど、それは他の曲と内容が被ってるか、あるいは単にいい曲じゃなかったかのどちらかだよ」



『ポスト・トラウマティック』のテーマはベニントンの死というよりも、彼を失ったシノダが向き合った自分自身の姿だ(本作がベニントンのトリビュートアルバムと解釈されることだけは避けたいと彼は話す)。ベニントンの死の直後に書かれたと思われる、悪夢の中を彷徨っているかのような「プレイス・トゥ・スタート」で彼はこう歌う。「誰か俺の存在意義を教えてくれないか?過去を忘れようと必死なんだ」

「感じたままを歌詞にしたんだ」彼はそう話す。「こんなことは曲にすべきじゃないとか、世間はどう思うだろうとか考えたこともあった。大切な誰かを失った人間が何かを生み出そうとする時、それは避けられないと思う。途方もない悲しみに暮れている時、人は不毛な自問自答を繰り返す。俺もそうだった。曲を作ることに怯えていた時期もあった」

Translated by Masaaki Yoshida

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