マイク・シノダ1万字インタビュー:チェスター・ベニントンの死と自身の現在地

シノダから見たベニントンは、予測不可能で巨大なエゴを抱えた、複雑なキャラクターの持ち主だった。「声だけじゃなく、あいつはパーソナリティもラウドだった」彼はそう話す。「あいつはどこでも誰とでもすぐ打ち解けるって、いつも俺たちからからかわれてた。とにかく楽しいことに目がないやつだったんだよ。その一方で、内面はとても繊細で複雑だった」

「やたら熱いくせに、ものすごく冷淡なところもあるんだ」彼はそう続ける。「あいつは映画オンチだって、俺はいつもネタにしてた。俺がまだ観てない映画の感想を聞くと、『10点中11点』とか『あんなクソみたいな作品に巨額の金が注ぎ込まれたなんて信じらんねぇよ。金返せってんだ』なんて言ってた。そういうやつだったんだよ」

感謝祭の日には何十人もの親戚を招いて料理を振る舞うなど、家庭人として知られたベニントンは、他人にも驚くほど気さくに接することもあったという。「まるで予想がつかないんだ」シノダはそう話す。「そっけない態度をとることもあれば、相手がひくような話をし始めることもある。飛行機で隣に座ってる赤の他人を相手に、どう考えても場違いな話を延々と続けたりね。小さな子供のように純粋で、無防備なところがあったんだ」

ベニントンの死の直後、リンキン・パークはウェブサイトにコメントを掲載した。ある一節が感じさせる切実さは今も当時のままだ。「悪魔がお前を奪い去ることは運命だったと、俺たちは自分に言い聞かせようとしてる。音楽を通じてその悪魔と向き合ったお前に世界中の人々が共感したことは、きっと奴らとの契約の一部だったんだろう」

その一節について尋ねられると、シノダはしばらく押し黙り、適切な言葉を探すかのように周囲を見渡していた。「あのくだりが言わんとしていることを一言で説明するなら、俺たちはあいつがどういう人間かを知ってたってことだよ」彼はそう話す。「何が起きてもおかしくないと、俺たちは心のどこかで覚悟してたし、それはあいつ自身も同じだったと思う。そういうことだよ。大切な人間を失った悲しみは、そう簡単に癒えはしない。傷口は今も開いたままだ」

Translated by Masaaki Yoshida

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