マイク・シノダ1万字インタビュー:チェスター・ベニントンの死と自身の現在地

ソロ作『ポスト・トラウマティック』、そして共にリンキン・パークを率いたチェスター・ベニントンの死について語ったマイク・シノダ

悲痛な思いを明かしたソロアルバム『ポスト・トラウマティック』を完成させたマイク・シノダ。今年8月にはSUMMER SONIC 2018出演も決定している彼が、共にリンキン・パークを率いたチェスター・ベニントンの死と、「音楽を作ることで悲しみを乗り越えられた」というアルバムの制作背景を語る。

マイク・シノダが最近描いた絵は、以前とは作風が大きく異なっている。ラッパー兼プロデューサー、そしてヴィジュアルアーティストとしての顔も持つ彼は、共にリンキン・パークを率いたヴォーカリストのチェスター・ベニントンがこの世を去ってから数ヶ月が経った頃、クリエイティヴ面における自身のアプローチが変化しつつあることに気がついた。中でも最も明確に変化が現れたのは、ペイントブラシを手にカンバスに向き合った時だった。最近仕上げたという絵のひとつは、ロボットの頭部や頭蓋骨らしきものが、泡立った緑色の海を思わせる正方形のバックグラウンドと溶け合っている。「最近はこういう抽象的な絵を描くことが多くなった」彼はそう話す。「精神的苦痛に直面している人間が棒人間の絵を描くと、世間はそれに深い意味があると考えるものなんだよ」

強い日差しが照りつける5月の暑い朝、白のTシャツと黒のベースボールキャップ姿のシノダは、空いているソーホーのホテルのレストランでくつろいでいた。目の前の大皿には料理が盛られていたが、彼が欲しているのはコーヒーだった。話す際には必ずアイコンタクトをとり、時には微笑を浮かべる彼だが、暗い話題に話が及んだ時には、適切な言葉を探すかのように周囲を見渡した。陽当たりのいい広々とした空間にいる彼は、普段にも増して小柄に見えた。そういう印象を与えることを、彼は望んでいないに違いない。

「今年頭を悩ませたことのひとつは、やることなすこと全てが色眼鏡で見られてしまうことだ」彼はそう話す。

自身のヴィジュアルアートについては多くを語らないものの、シノダは初のソロアルバム『ポスト・トラウマティック』で、過去10ヶ月のうちに経験した出来事に正面から向き合ってみせた。過去最高の速さで完成させたという本作は、音楽性こそリンキン・パークと類似しているものの(本作にはバンドの2017年作『ワン・モア・ライト』の制作中に生まれた曲が収録されている)、フリースタイルかのような生々しさを滲ませた歌詞は、これまでの彼のスタイルとは大きく異なっている。リンキン・パークが生きることに伴う苦痛(実体験に基づくものを含む)をテーマとしていたのに対し、『ポスト・トラウマティック』には人知れず綴った日記のような親密さがある。

Translated by Masaaki Yoshida

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