岸本ゆめのが語る、等身大のシンガーとして目指すディープな表現力

岸本ゆめの(Photo by Kazumi Watanabe)

昨年11月につばきファクトリー、及びハロー!プロジェクトを卒業した岸本ゆめのが、自身24歳の誕生日となる4月1日に初のソロ曲「BLUEMOON BLUES」を、5月1日にソロ曲2作品目「ユーアーアイ」を配信リリースした。シンガーソングライター・ナツノコエが作詞作曲を手掛けた、物憂げな切なさ溢れる「BLUEMOON BLUES」は、つばきファクトリーでの彼女のイメージからすると少々意外に響くかもしれない。

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つばきファクトリー時代から何度かインタビューをしてきたRolling Stone Japanは、グループから離れて活動を始めた彼女に話を聞いた。なぜ「BLUEMOON BLUES」のような曲を歌う必要があったのか。そこにはソロシンガー・岸本ゆめのとして決して譲れない想いがあったのだ。ソロとしてのインタビューは当然初めての経験。自分の進むべき道がはっきり見えているとはまだ言い切れないが、言葉を選び、ときに迷いながらも、彼女は人間・岸本ゆめのを我々にさらけ出してくれた。

―つばきファクトリーを卒業したあと、岸本さんはどんなことを考えていましたか。

卒業を決めた時点では卒業後はこういうことをしよう、したいということは考えていたけど、卒業ライブの直後は空っぽになったかもしれない。でも、空っぽにはなりつつも、卒業してすぐに今のマネージャーさんとかと話をしはじめていたので、脳が停止しきっていないというか、考えるべきことは考えていました。

―本当にオフにしちゃうと、いざ次に向けて動き出すときに大変になっちゃいますよね。

ああ! 無理ですね。元々は卒業公演の前からスタートダッシュを切りたいと思ってたんですけど、私はグループ活動の最後のほうでお休みしちゃって自分の中での予定が狂ってしまったので、卒業後にしっかり休んでしまったらもう動けなくなると思ってました。

―ひとりになってからどういう歌を歌いたいと考えていましたか。

人間らしい曲……ブルースを歌いたいと思ってました。グループ活動のときは自分からはかけ離れた主人公や世界観の曲をたくさん歌わせてもらっていて、そこでももちろん自分の身を通した表現はしていたんですけど、「次は自分の心を出せる歌を歌いたいな」って。

―これまではその曲に合わせて何かを憑依させるような感覚だった?

そうですね。もちろん、自分の経験は浅いし小さくて狭いので、本当に全く知らない感情を歌うときはそういう曲が来てから勉強することがあったんですけど、今はそうじゃなくて、日々勉強するなかで知り得たものを表現していけるようにしたいなっていう気持ちがあります。

―これまではグループという制限があるからこそ表現が選びやすいという側面もあったと思うんですけど、ソロになったことでその可能性は無限に広がるじゃないですか。その中から「これ!」と定めていくことはけっこう難しい作業なんじゃないかと思ったんですが、いかがですか。自由だからこその難しさ、というか。

難しいなって思います。でも、本来なら最初から自分というものを絞り込めたほうがいいのかもしれないですけど、そこはあえて決め込まず、あちこち寄り道をしたいと思っていて。グループのときに経験したことだけでは自分のことは理解しきれていないし、試してみないとわからない部分があるから、今後は「実はこういうこともできる」というものが見えてくるかもしれないと思っています。いろいろと試していきながら自分を出していきたいですね。

―失敗することを恐れずに。

グループのときは、こういうカラーで行こうとか、こういうキャラで行ったほうがいいって決めてくれる人がいたので、あんまり不安なく表現したりステージに立つことができていたんですけど、その分可能性も狭まってはいたと思うので、そのときそのときによって波があったり不安定になることがあったとしても、自分の可能性を広げていきたいと思っています。

―どういう表現であってもそれが自分であることには変わりないですもんね。

そうですね。嘘はないように自分の表現と向き合っていきたいです。

―最近はどういう音楽からインスピレーションを受けていますか。

いろいろ聴いてるんですけど、10代の頃にロカビリーとグループサウンズの時代をテーマにした舞台をやったことがあって、そのときの記憶をたどって、ザ・タイガースっぽい曲をつくりたいなと思ってます。

―へぇ~!

今、ギターを練習してるので、ザ・タイガースっぽいコード進行を調べて、いろいろコードを組み合わせて、「それっぽい!」って(笑)。あと、キザな男の歌をつくってみたり、いろいろやってます。それが楽しいんですよ。誰かっぽい曲をつくるっていうのは作曲の練習になるし、曲のバリエーションも増えると思うので。あと、私は山崎まさよしさんが昔から好きなので、それっぽい曲もつくろうとしてます。

―今っぽいものよりも昔の音楽のほうが好きなんですね。

そうかもしれない。私、速いテンポの曲はあんまり聴いてないのかもしれないです。ビーチ・ボーイズみたいなちょっとラフな感じですね。

―前もジャニス・ジョプリンが好きって言ってましたもんね。

ジャニスもハードなものよりはちょっと落ち着いた曲を聴いてることが最近は多いのかもしれないですね。


Photo by Kazumi Watanabe

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