レジェンドプロデューサー高垣健が語る、ビクターのロックの礎を作ったPANTAの音楽

レーザー・ショック / PANTA



高垣:『KISS』で話題になり。

田家:話題になり(笑)。

高垣:はい(笑)。『KISS』のスウィート路線を引き継いで『唇にスパーク』を作ったんですけれども、そのときにPANTAは伊藤銀次さんを連れてきたんですね。で、矢野誠さんと伊藤銀次さんの2人でアレンジ、プロデュースをされている。そう言われて聴くと、ギターとかベースのフレーズがナイアガラしているところがちょっとあるんですよね(笑)。

田家:たしかにエコー感と言いますかね。

高垣:そうです、そうです(笑)。しかも「レーザー・ショック」という曲はシングル・カットされたんですけども、超大手車メーカーのCMに使われました。やっぱりなんだかんだPANTAのアンテナはすごく敏感で、新しいポップスにもかなり興味を持っていたというのがこの曲ですごくわかると思います。

田家:そういう意味ではビクターとして高垣さんはどこまで関われたということになるんですか?

高垣:現場と個人的なお付き合いというのにあまり境目がないですよね。こういう仕事はね。仕事が関係なくなっても、それすら関係ないやという感じでお付き合いはしていましたね。だから、ライブも時間が許す限り見させてもらってました。

田家:高垣さんが選ばれた今日最後の曲はそのライブのアルバムであります。頭脳警察のライブ・アルバム東京三部作からお聴きいただきます。

あばよ東京 / 頭脳警察



田家:去年の6月14日、渋谷のライブハウスduo MUSIC EXCHANGEで行われたライブ、その模様は『東京三部作』というライブCDになってます。その中の「あばよ東京」をお聴きいただいております。頭脳警察です。

高垣:泣けますよね。この時は頭脳警察のライブと言ってもPANTAが歌ったのは数曲だったと聞いていまして、その中の3曲がこのアルバムに収められているんですけども、どれも絶唱という感じなんです。特に3曲目の「あばよ東京」は頭脳警察で『悪たれ小僧』っていうアルバムが1974年にあって、その中に入っている曲のリメイクなんですね。今聴いても新鮮で惜別の歌、PANTAが亡くなる1カ月前の演奏なんですけどすごいですね。音楽ファンのみなさんに聴いてほしい歌です。

田家:最後の頭脳警察のライブは鮎川さんのシーナ&ロケッツと一緒にやるって言ってやれなくなって、俺たちだけでもとやったライブでもありましたもんね。シーナ&ロケッツも高垣さんでした。

高垣:そうですね。一昨年から頭脳警察とシーナ&ロケッツでジョイントをやろうという企画が何回か立ち上がって、その都度PANTAの調子が悪かったり鮎川さんの調子が悪かったりして。たしか2~3回延期になって、結果実現できなかったんですけどもこの6月のduoのライブは頭脳警察が単独でやって、この音源を残したということですね。

田家:そういう意味ではまだ残された作品があるようですもんね。

高垣:そうですね。鈴木慶一さんと組んで、本当にPANTAが亡くなるギリギリまでスタジオに入っていた、PKO、PANTA Keiichi organization というPANTAと鈴木慶一さんのコラボレーションのレコーディングがあるんです。はそれも今2曲だけ配信で流れてますけど、おそらく何曲かまだ慶一さんのところにあるはずですし。その他にもライブは盛んにギリギリまで精一杯やっていましたから、ライブ音源はふんだんに残されているはずです、映像もあるはずです。

田家:それはレコード会社の担当云々ということではなくて。

高垣:そうですね。11月に僕とPANTAと共通の友人というか、共通の尊敬すべき崔洋一監督が亡くなっちゃったり。去年の1月に鮎川誠氏が亡くなったり、7月にPANTA本人が亡くなったりしてここ約1年はきつい年になりましたね。

田家:高垣さんが語るべきことはたくさんありますね。

高垣:うーん、そうですね。

田家:お元気でいてください。

高垣:ありがとうございます。こうやってPANTAのことを話ができて、今日は本当に幸せでした。

田家:こちらこそありがとうございました。

Rolling Stone Japan 編集部

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