PANTA追悼、TOSHIとディレクターが語る頭脳警察の新作アルバム『東京オオカミ』



今流れているのはこの番組の後テーマ、竹内まりやさんの「静かな伝説」です。

70年代から時代の先陣を切ってきたアーティストの訃報が続きますが、PANTAさんには他の方とは違うある種の実感、親近感と言うんでしょうか。距離の近さがあったりするんですね。これはとても私的なことなんですけど、頭脳警察の1枚目のアルバムの中の「戦争しか知らない子どもたち」という、杉田二郎さんの「戦争を知らない子供たち」のパロディ・ソングみたいな曲なんですけど、詞を書いたのが学生時代の僕の親友なんですね。彼は演劇をやっていて、後に脚本家になったりしたのですが、それが頭脳警察によって歌われるようになった。戦争というのはデモに明け暮れる学生たちの日々なんです。俺たちにとっての戦争みたいなことを茶化しながら、コミカルに歌った歌なんですね。それが頭脳警察のデビュー・アルバムに入っている。

当時のことってなかなか説明しにくいところがあって、彼らは「銃を取れ」とか「世界革命戦争宣言」とか、そういう曲を歌ったために政治的な過激なバンドというレッテルが貼られてしまいましたが、彼らが過激だったということよりも、時代がそうだったんですね。当時、若者がそういう歌に喝采を送った。彼らもビクター・レコードからヒット賞をもらったという、そういう時代だったんですよ。その時代のシンボルに祀り上げられて、過激派バンドというパブリック・イメージを与えられてしまって、後半はそれとの戦いを強いられてしまった。その後はそこを抜け出して、本当にやりたい音楽をやろうとする過程だった。

それでいて強いものとか、長いものには巻かれない、強いものには立ち向かい続けるという、その反骨精神を一貫して失わなかった。亡くなる直前にレコーディングされたのが『東京オオカミ』で、こうやってTOSHIさんとか田原さんの話を聞いていると、そういう世間のイメージとは全く違うPANTAがたくさんいるんだなと思わされたりして、来週からゆかりの方たちと音楽家PANTA、アーティストPANTA,表現者PANTA、そんな側面から語っていけたらと思ったりしております。



<INFORMATION>

田家秀樹
1946年、千葉県船橋市生まれ。中央大法学部政治学科卒。1969年、タウン誌のはしりとなった「新宿プレイマップ」創刊編集者を皮切りに、「セイ!ヤング」などの放送作家、若者雑誌編集長を経て音楽評論家、ノンフィクション作家、放送作家、音楽番組パーソリナリテイとして活躍中。
https://takehideki.jimdo.com
https://takehideki.exblog.jp

Rolling Stone Japan 編集部

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