PANTA追悼、TOSHIとディレクターが語る頭脳警察の新作アルバム『東京オオカミ』

さようなら世界夫人よ / 頭脳警察



TOSHI:これは頭脳警察の当初の頃からずっとやり続けている曲で、この曲があるから頭脳警察がここまでもってきた感じがありますね、私はね。

田家:それはどういう点が?

TOSHI:歌詞ですよね。歌詞そのものが全部を表しているというか、あらゆるところにPANTAの書く詞の中にも伏線みたいなものが大きくあると思うのでね。

田家:もとになったのがヘルマン・ヘッセ。アルバムは1972年5月に出た頭脳警察の『セカンド』に入っておりましたが、これは頭脳警察伝説、1972年 1月に発売される予定だった1stが発売中止。それはライブ録音だったりもしたのでスタジオ録音で録り直した『セカンド』。これも1カ月後の6月に再び中止になってしまった。発売中止はTOSHIさんはどんなふうにお聞きになったんですか?

TOSHI:1stのときはこれは絶対無理だっていうのは、俺もPANTAもわかっていたんですよ。まさか2ndまでとは思わなかったですね(笑)。

田家:1stは『世界革命戦争宣言』。赤軍派のアジテーション、アジビラがあって「赤軍兵士の詩」という曲もありましたもんね。それを外したんだけれども、ダメだったという(笑)。

TOSHI:まだきっと俺もPANTAも若かったんでしょうね。レコード倫理もよく知ってなかったし。

田家:でもヒット賞ももらっているわけでしょう?

TOSHI:そうですね。3枚目ですね。なんかパーティーみたいなのに出た記憶があるんだけど、どこにいていいんだかわからないような感じでしたね(笑)。

田家: 2024年、世界は今もガラクタの中に横たわってます。死神が大手を振って歩いています。PANTAさんの自伝本『歴史からとびだせ』、ここにTOSHIさんのコメントがありました。高2の後半だったかな、ひとしとアマチュアバンドを組んでいた頃に知り合ったんだと。

TOSHI:はい、そうです。

田家:所沢周辺では目立ってたねと。髪の毛がちりぢりできたねえやつだなと思った。

TOSHI:はい、たしかに(笑)。あの当時、サイケファッションみたいなのが流行っていてね。サイケのジャケットとパンツを履いているPANTAというのは珍しかったですね。

田家:『歴史からとびだせ』の中のTOSHIさんのコメントにこういうフレーズもあったんですね。“いつもノートに詞や歌をびっしり書いていて、それをやっちゃおうかということでオリジナルをやるようになった”。

TOSHI:よくPANTAがうちに来て、俺の寝てる横でギターを持って歌っていたんですよね。俺もPANTAもアマチュアバンドを所沢の中で解散してまして。みんな各々大学に入ったり、社会人になったりして残ったのが俺とPANTAがプー太郎みたいに(笑)。よくPANTAがうちに来ては昨日こんなの作った、こんなの書いたとか言って歌い出すんですね。

田家:そのときにPANTAさんに感じた才能みたいものはどんなことなんですか?

TOSHI:詞はそんなに感じたことないんだけど、メロディですよね。あの当時日本語でメロディをつけると、どうしてもマイナー調のフォークっていう時代だったんだけどね。PANTAが持ってくるのはメジャーだったりセブンスだったりおしゃれな耳に心地いいというか、それは才能でしたね。

田家:PANTAさんはフォーク嫌いでしたもんね(笑)。

TOSHI:そうですね、大嫌いでしたね(笑)。

田家:TOSHIさんが選ばれた今日の6曲目1973年3月発売、4枚目のアルバム『誕生』から「詩人の末路」。

詩人の末路 / 頭脳警察



TOSHI:この曲は若いときからうちに来ては歌っててね。PANTAのこういう面もありますよというとこで、追悼の意味も含めて。

田家:そう、そこですよね。こういう曲を聴いたときにPANTAらしくないみたいに思うイメージが出来上がってましたもんね。

TOSHI:ええ。そこは本当にもったいないんですよね。

田家:過激な頭警という。

TOSHI:もうね、そういうレッテルを貼られてきてしまっていたからね。

田家:TOSHIさんはそういうイメージがついていくのをどう受け止めていたんですか?

TOSHI:その当時は俺もPANTAもわかっていたから、別に意識はしてませんけどね。

田家:ですよね。お客さんが喜んでくれればそれでいいみたいなね。

TOSHI:そうそう、その空気ができればという感じでしたもんね。

田家:抜けようかなと思われたというのは、そういうことが関係していたんですか?

TOSHI:頭脳警察でつけられちゃったイメージというかね。それにちょっと引っ張り回されたというので、俺もPANTAも疲れていたんですよね。俺も自分のことをやるわみたいなことでPANTAに言って、抜けましたね。

田家:そのとき、PANTAさんはなんておっしゃったんですか?

TOSHI:お前にも責任あるんだからどうのこうのとか、ちょこっと言い合ったりはしたんですけどね。

田家:俺だけに押し付けるなよみたいな(笑)。

TOSHI:でも契約書も何もねえやって言って、私はポーンっと逃げたんですよ(笑)。

田家:若かったですねー(笑)。

TOSHI:若かった(笑)。

田家:TOSHIさんは1974年11月の6枚目『悪たれ小僧』のときは復帰されましたが、翌年に解散してしまいました。TOSHIさんが選ばれた今日の7曲目、再結成のときの曲です。1990年発売の頭脳警察、7枚目のアルバム『頭脳警察/7』の中の「万物流転」。

Rolling Stone Japan 編集部

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