PANTA追悼、TOSHIとディレクターが語る頭脳警察の新作アルバム『東京オオカミ』

東京オオカミ / 頭脳警察

田家:TOSHIさんが選ばれた今日の1曲目です。

TOSHI:元気な声ですよね。

田家:これは作詞がPANTAさんと田原さん。作曲がPANTAさん。

田原:このアルバムの構想が出て、「東京オオカミ」の歌詞を作っていく中で、当初はPANTAさんの発想で歴史への復讐劇みたいな、そういうところから始まっていたんですね。その中でオオカミをテーマにしていったのは、狛犬の中にオオカミの狛犬というのがあるんですよ。PANTAさんの中の想像で、もともと東京にオオカミがいて、生きていたオオカミたちが滅んでいったけれども、石の像になって今もいるというイメージの曲なんです。歌詞が出来上がるときにTOSHIさんが高崎でライブをやられていて、PANTAさんがちょうど退院された当日だったんですけどもTOSHIのライブに行きたいって言い出して。遠出をしてTOSHIさんに会いに行くということだったので車を出して、高崎までドライブをして。ライブハウスに着く直前にお蕎麦屋さんに入ったんです。そこが、その地域に生存している日本オオカミを追っかけている猟師さんたちの基地みたいなお蕎麦屋さんだったんです。壁とかにあらゆるオオカミの本とか写真とかが飾ってあって、それをPANTAさんがご覧になって、そこから「東京オオカミ」の曲自体にも入っていく。TOSHIさんに会いに行くということがなければあそこには行かないですし、オオカミに結びつくこともなかったので今回のアルバムの特徴的な曲だと思いますね。

田家:TOSHIさんはPANTAさんが病院からライブハウスに来たときその日のことを覚えてらっしゃいます?

TOSHI:うん、来たときは2人で会って写真撮ってとか。あのときはちょっと久しぶりに会ったのかな。顔を見たときはホッとしたというか、うれしかったですけどね。

田家:あらためてこの1曲目「東京オオカミ」をお聴きいただきながら話を続けていきます。TOSHIさんは新作ということで、どんなアルバムになるかなみたいな想像をされたりしてたんですか?

TOSHI:全くそれはしてませんでした。できなかった。PANTAの体調でスタジオが動いていて、私たちはお互いの空いている時間にそのスタジオに行って被せていくという作業だったので。CD自体の全体像がまだ、後半になったらわかってきましたけどね。2年近くかかったのかな。全体的に。

田原:そうですね。

田家:2019年に新作アルバム『乱破』が出て、その時のインタビューでまだまだ歌いたいことが山程あるんだよねと言われていたんですよね。

田原:『乱破』ができて新しいバンドが形になっていったんだと思うんですよね。2019年に新しいメンバーになった最初のライブというのは、まだ集めたばかりで彼らも緊張があって。TOSHIさんとやるって緊張もありますし。それがだんだんバンドとして完成していった。特にPANTAさんはその後『会心の背信』というライブ・アルバムが出るんですけども、2人で裸になった頭脳警察に戻ってるんですね。そこからバンドとしてもう一度若い子たちとやるんだという気持ちが強くあったんだと思います。

TOSHI:その若い人たちの新しい風みたいなものをすごく欲していましたね。それは私もそうですけどね。

田家:やっぱりTOSHIさんもそういうのがあった方がいいなと。新しい曲とか、新しい刺激、新しいミュージシャンとやりたいみたいなものはずっとあったんですか?

TOSHI:それは若い頃から一緒ですね。そこはお互いあまり落ち着きたくないというか(笑)。落ち着けない性格なのか、俺もPANTAも。

田家:今回のアルバムには「時代はサーカスの象にのって」が入っておりまして、TOSHIさんが選ばれた今日の2曲目がその曲なので、曲の後に話をお訊きしていこうと思います。

時代はサーカスの象に乗って / 頭脳警察



田家:作詞が寺山修司さんと高取英さん。作曲がPANTAさん。

TOSHI:これは詞もそうですけど、曲とテンポ感が好きですね。

田原:今回のアルバムに関して、この曲は最初からPANTAさんが入れたかったみたいですね。時代への復讐劇がテーマの1つにあって、「時代はサーカスの象に乗って」というのがそれですね。これは演奏がアルペジオで始まっているパターンなんですけれども、アルペジオ・パターンのこの曲をどうしても入れたいとおっしゃっていました。

田家:「時代はサーカスの象に乗って」というタイトルで古くからのサブカルファン、演劇のファンは1969年の天井桟敷の旗揚げ公演のタイトルだったことを思い出す方もいらっしゃるのではないかと思うんですけども、これは2002年に高取英さんがご自分の劇団・月蝕歌劇団で上演されたときにできた曲?

田原:そうですね、はい。

田家:頭脳警察としてはシングルでも出ていて、アルバムでは『暗転』。2013年の作品に入っていました。バージョンが違うんですね。

田原:当時このバージョンでも何度かやっているんですけども、実際音源としては残っていなくて。今回これを残したいというのはPANTAさんのご意向でした。

田家:頭脳警察、PANTAさんにとって寺山修司さんというのは、想い入れのある人なんでしょうね?

TOSHI:ビクターで70年の頃、2ndの録音をしているときに寺山さんがスタジオに遊びに来たというか、見に来たみたいなことは後で聞いたんですよね。PANTAは寺山さんとは会ってないんですよね。私は二度くらいお会いしたことがあるんですけれども。

田家:TOSHIさんは演劇も長いですもんね。

TOSHI:とか、友だちがいたりしてね。

田家:初期の頃の頭脳警察の話を後ほどTOSHIさんにまた伺うんですけれども、やっぱり今とはかなり違いますもんね。

TOSHI:時代が違いますからね。ベトナム戦争、いろいろ運動も盛んな時代ですからね。

田家:そんな話は後半にお訊きしようと思います。TOSHIさんが選ばれた今日の3曲目「冬の七夕」です。

Rolling Stone Japan 編集部

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