UMIがヒーリングと音楽を掛け合わせる思想的背景、BTS・Vや星野源からの学び

Photo by Kana Tarumi

日本人の母とアメリカ人の父を持つ、米シアトル出身のシンガーソングライター・UMI。昨年のサマーソニックでは星野源がキュレーションする「“so sad so happy” Curated by Gen Hoshino」に出演、12月末にはVをフィーチャリングした「wherever u r (feat. V of BTS)」をリリースした。さらに4月からは初の日本単独ツアーの開催が決定。そんなビッグトピックが続く中であるが、UMI自身は昨年メジャーレーベルを辞めてインディーで活動することを選び、最新EP『talking to the wind』にはパートナーでありプロデューサーのV-Ronと日常の中で制作した音楽がパッケージングされている。

UMIの音楽は「ヒーリング・ネオソウル」とも評されるが、その音に身を委ねていると緊張やストレス、不安などを取り除いてくれる作用がある。ライブはメディテーションからスタートし、取材現場でもずっとピースフルなヴァイブスを放ってくれていたUMIは、音楽を作ることや聴くことが人々に与え得るパワーについてどのように考えているのか。Vや星野源との制作・共演から学んだことについてもハッピーな表情を浮かべながら話してくれた。

【写真ギャラリー】UMI撮り下ろし(全14点:記事未掲載カットあり)


Photo by Kana Tarumi

―去年のサマーソニックでUMIさんのライブを初めて見たのですが、本当にスペシャルで。1週間経っても、ライブ中の空気や、あの時にもらったリラックスした感覚を思い出せるような特別なものでした。

UMI:嬉しい~!

―当日はいろんなアーティストのライブを見たのですが、派手な演出でファンタジーの世界へ連れていってくれるライブもあれば、UMIさんと同じステージに立ったジェイコブ・コリアーのように何十人ものプレイヤーの音が重なるアンサンブルで楽しませてくれるライブもある。音楽やライブにはいろんな表現方法がありますが、UMIさんとしては普段どんなライブを作りたいと思っていますか。

UMI:聞かれたことない! 嬉しい~。英語でいうと「Experiences」、経験。みんなにどういう気持ちで帰ってほしいかを考えて、いつもストーリーを作りながらショーを組み立てている。ハッピーな気持ち、繋がりを感じる気持ち、思い出、それにたどり着くためには、最初に安全であるという気持ちをみんなに持ってほしい。みんないろんな想いを持ってショーに来るけど、嫌なことや心配してることを全部忘れて、UMIのショーのあいだだけでも「自分は大丈夫」という気持ちになってほしい。でもその気持ちになるには、まず安心がベースにないといけないと思うから、自分をハグすることとかメディテーションでライブを始めるし、隣にいる人とちょっと話してみてもらう。「この人優しいじゃん」「こっちの人も優しいじゃん」ってわかれば、叫んでもいいと思えるし自分を解放できると思うから。その次はもっとエネルギーを上げてほしいから、「叫んでください」「一緒にイェイって言ってください」とか言って、シャイな気持ちを取り除いていく。そうやって、どうやったらみんなをハッピーな気持ちにまで持っていけるかを想ってショーを考えている。エンターテインメントだけではなく、人の感情を想っていつもショーを組み立てている。


Photo by Kana Tarumi

―そもそもなぜ、自分の音楽でみんなに安心やヒーリングを提供したいのだと思いますか。

UMI:ひとつ目の理由は……わからない。それがUMIだと思う。考えてそうしてるとかじゃない。そうすることが自分にとっての喜びだから自然とそうしてる。2つ目の理由は、自分がヒーリングしてもっとハッピーになれたことにすごく感謝してるから。それをみんなとシェアしたい。友達も、ファンのみんなも、つらいことがいっぱいあると思う。UMIもつらいことがあった時、メディテーションをすることでどんどん毎日軽くなった。UMIができるんだったら、みんなもできると思う。ただ、どうやってやるのか、お手本が必要だと思う。UMIがお手本になれたらみんなももっと毎日軽くなれるのかなと思う。小さい気持ちでヒーリングは始まると思うから、UMIがそのきっかけにでもなれたら嬉しい。

―UMIさんがメディテーションを始めたきっかけを聞いてもいいですか?

UMI:もともとずっと緊張しいで心配性だった。8年前くらい、高校を卒業する時に、人生の新しいチャプターが始まるのにこんなに緊張しながらこれからを生きたくないと思って。なんでこんなにガチガチになって、ずっと心配してるんだろうって。学校でメディテーションのことを勉強していたからちょっとやってみようかなと思って、YouTubeで「メディテーション」って検索して10分間やってみたら……泣いた。初めて頭の中が空っぽになって、「この気持ちって自分で作れるんだ」ということを発見して、そこから毎日やるようになった。

―そういった自分の人生の経験をそのままUMIの音楽表現にしているということですよね。

UMI:うん、自分の経験を勉強にしてる。自分の人生で勉強して、それをショーに入れてる。

―2022年に完成させた名盤のタイトルは『Forest in the City』で、最新EPは『talking to the wind』です。今の答えとつながってくるとも思うのですが、「Forest」や「wind」など、UMIさんが自然を音楽のモチーフにするのはどうしてですか?

UMI:自然が大好き。みんなに人間と自然の関係を忘れてほしくないと思ってるかな。自然があるからリセットされるし、アイデアも浮かぶ。頭がごちゃごちゃしてる時は自然を触るだけでクリアになる。心配してる時とかイライラしてる時って、1日中お外に行ってない日が多いと思う。もともと人間は外にいる生き物だったのに、今はみんなオフィスの中にいる。そりゃイライラするよねと思う(笑)。「お日様感じた?」とか、「散歩した?」とか、本当にシンプルなことで人間の悩みはクリアになると思うから、それをみんなに教えてあげたい。でも「みんな外に行きなさい!」って言うんじゃなくて、音楽を通して教えてあげるのが一番だと思う。


Photo by Kana Tarumi

―そうやってUMIさんから気づきをもらっている人は、私含め今世界中にたくさんいると思うのですが、UMIさんは誰からインスピレーションを受けますか?

UMI:アーティストだと、ジェネイ・アイコ。12月に一緒にライブして、すっごくインスピレーションをもらった。ジェネイ・アイコもサウンドボウルとかを使って、ヒーリングなショーをみんなにシェアしてるから。他には、フランク・オーシャン、ディアンジェロ、エリカ・バドゥ、ロザリア、ビョークとか……いっぱいいる! 日によって違うUMIになると思ってるから、その日ごとのインスピレーションがあると思う。


2020年のNPR「Tiny Desk (Home) Concert」出演時、サウンドボウルを演奏するジェネイ・アイコ(14分過ぎ〜)


『talking to the wind』収録曲「happy im」のパフォーマンス動画、冒頭でUMIがサウンドボウルを演奏

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