ジュリアン・ラージのジャズギタリスト講座 音楽家が歴史を学ぶべき理由とは?

 
音楽家が歴史を学ぶべき理由

―こうやって話を伺いながら、音楽の歴史に精通していることがそのまま、あなたが弾くギターの魅力とも直結しているのかなと思いました。今更ですけど、なんでそんなに詳しいんですか? 人生のどの時期に音楽の歴史を勉強してきたのでしょう。

ジュリアン:僕はいつも歴史に興味があった。若くしてキャリアをスタートして、周りから多くの注目を集めていて、そのことに対してある種の恐れを持っていたんだ。アメリカには才能ある若者を搾取する構造があることにも気づいていた。そんなとき、歴史を学ぶことが僕の心の拠り所になった。歴史を学ぶことは、自分自身も長い歴史のなかの一部であって、あくまで大きなコミュニティの一人であるということを再認識させてくれる。そこからずっと学び続けてきて、その過程で同じ考えを持つ人たちと出会うこともできたんだ。

―今のは、あなたがシーンのなかで有名になり始めた12〜13歳くらいの話ですか?

ジュリアン:いや、もっと前だ。7歳くらいの頃かな。

―それはすごい(笑)。

ジュリアン:当時、インターネットはすでにあったけど、YouTubeみたいなプラットフォームはまだなかった。だから、本を読んだり、そのことに詳しい人を探したり……情報を得ることは、想像以上に努力が必要だったね。でも、僕は今でもそのやり方を続けているよ。僕にとってはそっちの方が簡単なんだ。


ジュリアン・ラージ(1987 – )

―最後に聞かせてください。歴史を学ぶことが、なぜ大切だと思いますか?

ジュリアン:それについては、僕もよく考えていた。歴史を気にしない人たちもたくさんいるからね。僕が歴史からの学びを大切にしている理由はいくつかある。まず一つは、文化的な側面から理解することで、そのもののコンセプトが理解しやすくなる。エレキギターを例に挙げると、うまく弾くためにもエレキギターが生まれた理由、その背景を知りたいって僕は思うんだ。1930年代初頭、エレキギターは「表現の一手段」として普及しはじめた。つまり、エレキギターは表現を伝えるための楽器なんだ。僕はギターを弾くとき、そのことをいつも念頭に置くようにしている、テクニックとかそういったことは二の次なんだ。

2つ目の理由は、コンポジションの側面から。例えばジャズは、ある特定の視点を持った人々から生まれた。もし、ジャズミュージシャンになりたいなら、その視点を持つべきだと思う。ただスタイルを演奏するだけでは意味がない。歴史は「自分が世界をどう見ているか」「その視点がいかに重要なことか」を教えてくれる。好むこと、好まないこと、そういった趣味嗜好はすべて音に反映されるからね。

ビル・フリゼールは歴史に精通しているよね。そして歴史は、彼の立ち位置を指し示している。これが3つ目の理由だ。歴史は過去に起こっていないことを明らかにする。「これは過去に起こっていたけど、このバージョンは見たことがない」というふうに。歴史を知っていることで、最初の目撃者になれるんだ。だって、ほんの少しの違いであろうと、音楽を進化させるには十分な違いになりうるわけだからね!

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ジュリアン・ラージ
『Speak To Me』
配信・輸入盤:3月1日 / 国内盤:3月15日リリース 
配信・予約:https://julian-lage.lnk.to/SpeakToMe

Translated by Kyoko Maruyama, Natsumi Ueda

 
 
 
 

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