ヒクソン・グレイシーが語る、パーキンソン病との闘い、悟りの境地

「今でも柔術によって自己表現したいと強く思っている」

「戦わずして勝利する、というコンセプトに、より心地よさを感じるようになったんだ」ヒクソンは私に言う。「今でも柔術によって自己表現したいと強く思っている。ただ、違ったやり方でね。かつてのように競技としてではなく、自己認識に重点を置くんだ」

ジョゼ・パジーリャはヒクソンとトレーニングしたことがあるが、それはヒクソンが物事を肉体的に理解するからだと主張する。

「ヨガの体勢のような複雑な動きを説明されるとしよう。私だったら頭の中でそのイメージを浮かべて、身体をそれに当てはめようとする」。パジーリャは語る。「ヒクソンの場合、そうではないんだ。彼の学び方は異なっている。彼は実体験を通じて学ぼうとするんだ。知覚よりも感覚によって知識を吸収するタイプだと思うね」

だからこそ彼がパーキンソン病と診断されたことは、より残酷な事実である。

パーキンソン病は身体的な病気であり、ヒクソンはこれまで身体を使って生き抜いてきた。

インタビュー中も彼は言いたいことを口に出来ないが、手振りで説明することが出来る。彼は相手に触れることで相手を測定しているようだ。握手をするときじっと眼を覗き込んでくる彼は、右手で相手の右手を握りながら、左手で上腕三頭筋から広背筋までを探る。まるで相手の心を読んでいるように。

ヒクソンは動作とアクションによって自らの考えを明確に表現する。

さまざまな意味で、言語は彼にとって妨げといえる。彼の手に触れるまで、私はその天賦の才能を判っていなかった。だがその後になると、彼が達人であることは明らかだ。ヒクソンはマグワイアに、ブラジリアン柔術を実体験してみるまで、文章にすることは不可能だと語った。彼の言う通りである。

from Rolling Stone US

Translated by Tomoyuki Yamazaki

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