ヒクソン・グレイシーが語る、パーキンソン病との闘い、悟りの境地

体質管理の試練

パーキンソン病と戦うにあたって、ヒクソンは砂丘の代わりに体質管理の試練を乗り越えようとしている。

病気の診断があってから、医師は通常通り投薬による治療を行うことにした。それによって症状は軽減されたが、その体質に大きな向上は見られなかった。投薬による副作用で、ヒクソンは体調不良を見せるようになっている。

「リスク回避を重視するアメリカの医療体制に盲目的に従うというのは、剣と盾を明け渡して、自分の墓穴を掘るシャベルを手にするようなものだ」。ヒクソンは自伝の執筆用に行われたインタビューのひとつで、マグワイアに話している。

ヒクソンは治療の効果を高めるべく、食事とエクササイズの方法を変えることにした。彼は牛肉と小麦粉を摂るのを止めている。彼はまたファスティングを始め、ボトル入りの水のpH値が彼の体調に影響を及ぼすことから、水質化学まで掘り下げるようになった。それに加えて、彼は格闘家としてのコンディションを保つためのハードな訓練も欠かしていない。

「集中して運動するように心がけているんだ」。彼は私に言う。「自転車、レジスタンスグローブとフットウェアを着用しての水泳とかね。より効果を増すために、ワークアウトするときシュノーケルを付けたりもしているんだ。そんなトレーニングを毎日行っているよ」

ヒクソンの体質管理はモチベーションであり希望の源となっているが、それと同時に砂丘と同じく、人生最大のバトルに向けて自信を付けるための障壁でもある。我々は誰であろうがいつかは死ぬものだが、医師からパーキンソン病の宣告を受けることは、人生の最終章が始まったことを意味する。事故にでも遭わない限り、彼は自分の人生がどのように終わるのか知っているのだ。闘いに明け暮れ。命を賭けてきた男が、いずれ生命を奪いに来ると予測される手の震えに直面したとき、どう対処するのだろうか?

「もし私が17歳でパーキンソン病の宣告を受けたら、大きな打撃を受けていたかも知れない。まだ人生経験が浅かったし、自分というものが判っていなかったからね」。ヒクソンは私に話す。「でも今日まで人生でさまざまなことをしてきた。自分が何者なのか分かっているんだ。パーキンソン病を自分に順応させるつもりだよ。ハッピーな知らせではないけれど、可能な限り快適な状態に出来ることだよ」

Translated by Tomoyuki Yamazaki

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