カーネーションが語る19作目のアルバム、40周年を迎えてたどり着いた新境地

—直枝さんの中のニルソンが書いた曲(笑)。「ソングライター」と次の「光放つもの」が継目なく繋がって組曲のようになっていますが、緻密に作り込まれていて本作のハイライトだと思いました。

直枝:この2曲は斬新な構成にしたくて、繋ぎ方にはかなりこだわりました。「光放つもの」は最初はワンコーラスしかない短い曲だったんです。それを核にして組曲を作ってみようと思って、そのワンコーラスに繋がるように逆算して他のパートを作り上げていったんです。パズルみたいで作っていて面白かった。

—「光放つもの」自体も1曲の中で景色がガラッと変わる。入れ小細工みたいにどんどん迷宮化していく展開が面白いですね。

直枝:『Parakeet & Ghost』(99年)みたいに曲ごとに様々なイメージを繋ぎ合わせたことはあったけど、組曲を意識して作ったことはこれまでなかった。この曲は作品を作る楽しさをすごく感じましたね。

大田:ほんと、これは作り込みの世界だよね。

直枝:作り込みと思い込み。僕の幻想の世界だから。

—「ソングライター」の主人公の内面の世界が「光放つもの」で展開していく、というふうにもとれますよね。

直枝:そういうストーリーも成り立ちますね。「光放つもの」で世界が歪んでくる。書き割りの世界ってサイケなイメージもあって、そんな作り込んだ世界で遊ぶ楽しさがこのアルバムにはある。

—「光放つもの」が直枝ワールドだとしたら、初めて大田さんが曲を提供して歌った「深ミドリ」は大田ワールドですね。

直枝:「40周年だから曲を作って」って大田くんに電話したんです。一部しかできなくても俺がまとめるから気楽にやってみてって。ただ条件として、友達には頼らないこと。困ったら俺に頼ってねって。

大田:直枝くんは毎年、大田くんのソロ・アルバムを作ろうって言ってくれるんですよね。曲を書くんだったら自分でなんとかしよう、と思って録音機材のMTRを買ったんです。

—シタールが入ったりして、インドっぽい雰囲気が漂うサイケデリックでフォーキーな曲です。

大田:そこは直枝くんがうまくアレンジしてくれて。

直枝:雲が流れていくような感じにね。途中からツインギターが入ったりしながら。

大田:俺のイメージにぴったりでさすがだと思った。この曲のイメージは大学時代に住んでいた京都の深泥池(みどろがいけ)の冬の風景なんです。歌詞を書くのが大変で、家のパソコンの周りに思いついた言葉のメモをびっしり貼って考えてたんです。でも、酔っ払って風呂に入っている時にサビが思いついて、これでいいやって。

—「ランダン ルドゥ ランダン」という呪文のような不思議なサビですね。

直枝:そのフレーズがあるから、この曲が生きた。意味がわかんないのが良いんです。

—直枝さんのソウルフルな歌声とは対照的に、淡々とした歌声が大田さんの味わいを出してます。

大田:直枝くんと比べると細い声なんだけど。

直枝:その歌声がいいんですよ。

Rolling Stone Japan 編集部

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